家庭に普及する会話AI 時代は指先からボット
藤村 厚夫(スマートニュース執行役員)

2016/6/2 6:30
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パソコンソフト大手マイクロソフト、交流サイト(SNS)最大手フェイスブック、そして先ごろ検索大手グーグルが、開発者向けの大規模な会議を相次ぎ開催した。そこに共通していたのは、人工知能(AI)で人と会話する「ボット」技術の開発だ。

グーグルは音声で知的な会話ができる家庭用機器「グーグル ホーム」を発表した=共同

グーグルは音声で知的な会話ができる家庭用機器「グーグル ホーム」を発表した=共同

「知的な会話」ができる技術を独自に開発し、広く社外の開発者らに提供してアプリやサービスの供給を活性化しようとしている点で、3社の取り組みは共通している。

知人と対話アプリで会話するような気分で天気や株価、ニュースなどを呼び出したり、チケットを購入したりできるようになる。物知りで手際よく働いてくれる会話の相手が、人間ではなくボットであるという時代がそこまでやってきている。

ボットの登場で現実味を帯びてきたのが、音声による操作体系だ。スマートフォン(スマホ)では「指先」が操作の中心だった。だが、これから活性化する市場、例えば自動車の運転中や家庭内では「音声」による操作が重要になる。音声で指示して音声で結果を受け取る場面も増えてくる。

スマホではグーグルが「グーグル ナウ」、アップルが「シリ」という音声による操作と読み上げができるアシスタント機能を提供してきたが、さしたる利用法の提案もなかった。

だが、ダークホースだったアマゾンがこの状況を変化させた。昨夏発売(日本では未発売)の「エコー」はそれ自体がスピーカーで、マイクが組み込まれており「アレクサ」と呼ぶ音声による操作体系を搭載する。

周囲のユーザーからの呼びかけで起動し、指示に応じて、音楽再生やアマゾンへの物品の注文はもちろん、検索結果や天気情報などを読み上げたり、連携する機器を操作したりできる。

最初はアマゾン自体が提供するサービスとの連携に限られていたが、現在はアレクサを外部の開発者らに公開。照明を操作したりウーバーと連携してタクシーを呼んだりなど、サービスを着実に増やしている。ディスプレーを備えたタブレット型製品を開発中とも伝えられる。

ふじむら・あつお 法政大経卒。アスキー系雑誌の編集長、外資系IT(情報技術)企業のマーケティング責任者を経て2000年にネットベンチャーを創業、その後の合併でアイティメディア会長。13年から現職。東京都出身、60歳。

ふじむら・あつお 法政大経卒。アスキー系雑誌の編集長、外資系IT(情報技術)企業のマーケティング責任者を経て2000年にネットベンチャーを創業、その後の合併でアイティメディア会長。13年から現職。東京都出身、60歳。

これまでは、多数の民生機器や他社サービスと連携しコントロールする役割は、スマホが担うと思われてきた。実際、アップルでは家庭内機器やiPhoneと連動する規格「ホームキット」を提供しているが、勢いを得ていない。一方、エコーはすでに米国内で300万台売れているとのリポートもあり、有力だ。

今後は、スマホの台数を大きく超える規模の民生機器が、インターネットにつながり連携を強めていくとされる。そのハブに当たる製品が脚光を浴びるのは自然だ。

グーグルも先ごろの開発者向け会議で「グーグル ホーム」という、エコーに類似するハードウエアをお披露目した。ホームは、同時に発表したボット「グーグル アシスタント」を搭載し「朝の気分用の音楽をかけて」といった高度な指示に応えるという。

同社が買収した高度な室温の調整機器「ネスト」などと連携することも強みになりそうだ。ホームキットが低調のアップルも6月に開発者向け会議を控えており、この種の製品を発表する可能性がある。

指先操作の威力であらゆる産業に影響を及ぼしてきたスマホだが、いよいよ「ポスト・スマホ」が見えてきたのかもしれない。できれば、日本語なまりの音声操作でも、機器がスムーズに動作するようにしてもらいたいものだ。

[日経MJ2016年5月30日付]

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