新風 Silicon Valley(日経産業新聞)

フォローする

Myニュース

有料会員の方のみご利用になれます。
気になる連載・コラムをフォローすれば、
「Myニュース」でまとめよみができます。

米西海岸で一大勢力 新VC「スーパー・エンジェル」
校條 浩(米ネットサービス・ベンチャーズ マネージングパートナー)

2016/5/27 6:30
共有
保存
印刷
その他

 ベンチャー企業との協業を通じてオープンイノベーションを試みる大企業の動きが活発になってきた。そのような状況で、米国のベンチャーキャピタル(VC)に出資したい、という日本企業が増えている。成果を出すには、米国のVC状況をよく理解することが大事だ。

めんじょう・ひろし 小西六写真工業で新事業開発に従事。BCGを経て1991年にシリコンバレーに移住。新事業コンサルティングを経て、日米のベンチャー企業に投資するVCを組成。

めんじょう・ひろし 小西六写真工業で新事業開発に従事。BCGを経て1991年にシリコンバレーに移住。新事業コンサルティングを経て、日米のベンチャー企業に投資するVCを組成。

 まず、VCにはいろいろな種類があることを認識しよう。ベンチャー企業の成長過程の各段階でプレーヤーとなるVCは変わる。

 創業のための準備をするアクセラレーターやインキュベーターに付随するVCは、投資額が数千万円以下と小さく、ファンドの規模も小ぶりだ。ベンチャー企業が急成長する時の多額の資金需要に応える「レーターステージ」のVCは、投資額も数十億円以上と大きく、ファンドも一千億円規模になるなど、桁違いに大きい。

 前者は新興のVCであり「マイクロファンド」とも言われる。後者はシリコンバレーの発展と共に成長してきた老舗VCで、セコイア・キャピタルやクライナー・パーキンス(KPCB)などがある。セコイア・キャピタルが育てた会社はエレクトロニック・アーツやヤフー、アップル、グーグルなどきら星のごとくだ。

 このVC界に大きな異変が起こりつつある。VCの「群雄割拠」である。上記の状況だと、ベンチャー企業が製品を開発したり、製品を市場に投入したりする段階である「シードラウンド」や「Aラウンド(初めての本格増資)」に投資するVCがほとんどない。マイクロファンドには本格資金調達段階で出資をする体力はない。伝統的なVCは小さな規模の投資ではファンドを使い切れない。ということで、シードラウンドやAラウンドが抜けてしまった。

 そこで登場したのが「スーパー・エンジェル・ファンド」と言われる新しいファンドである。2010年くらいから自然発生的に始まった。大手VCがソーシャル・ネットワーキング・サービス(SNS)やゲームなどの新市場を理解できずに投資にちゅうちょしているうちに、小額の投資を次々に行った小さなファンドが大きな投資リターンを得て、新たなVCがたくさんできた。

 その後、スーパー・エンジェル・ファンドは増え続け、今では300社以上が活発に投資している。これらが新世代の有力VCとしてベンチャー界の趨勢を握るような勢力となった。一説によると、シリコンバレーのシード投資案件の7割はこれらのスーパー・エンジェル・ファンドが牛耳っているともいわれている。

 最近ではこれらの新世代の有力VCからさらにスピンアウトして自分の「ミニチュアファンド」を作る動きが出てきている。これらのファンドはかなり専門性を絞り、いい起業家を育て、大手のVCが投資できるくらいの段階まで成長させるのがビジネスモデルである。

 フィンテック(金融イノベーション分野)では、金融機関出身で規制に詳しく、業界の内側まで人脈のあるエグゼクティブが小規模のファンドを立ち上げるような例が増えている。

 シリコンバレーを中心とした先進ベンチャー企業の動向を把握するには、何百社という新興VCコミュニティーとの交流が必要となってきている。日本企業はシリコンバレーの内部コミュニティーに入ることがすこぶる苦手だ。現状では限定的で偏った情報しか入って来ない。さらに多くのVCと付き合う仕組みを考え、シリコンバレーの最先端VCとのネットワークを開拓することに挑戦して欲しい。

[日経産業新聞2016年5月24日付]


「日経産業新聞」をタブレットやスマートフォンで

 全紙面を画面で閲覧でき、各記事は横書きのテキストでも読めます。記事の検索や保存も可能。直近30日間分の紙面が閲覧可能。電子版の有料会員の方は、月額1500円の追加料金でお読み頂けます。


人気記事をまとめてチェック

「テクノロジー」の週刊メールマガジン無料配信中
「テクノロジー」のツイッターアカウントを開設しました。

新風 Silicon Valley(日経産業新聞)をMyニュースでまとめ読み
フォローする

Myニュース

有料会員の方のみご利用になれます。
気になる連載・コラムをフォローすれば、
「Myニュース」でまとめよみができます。

共有
保存
印刷
その他

電子版トップテクノロジートップ

【PR】

新風 Silicon Valley(日経産業新聞) 一覧

フォローする

Myニュース

有料会員の方のみご利用になれます。
気になる連載・コラムをフォローすれば、
「Myニュース」でまとめよみができます。

中国の騰訊控股(テンセント)は交流サイト(SNS)で急成長した=ロイター

ロイター

背筋の凍る思いがしたテンセント幹部の発言

 事業会社のスタートアップへの出資や戦略的パートナーシップ提携、オープンイノベーションは世界的なトレンドになっている。この分野でもっとも早く動いた米国の成熟企業、例えばゼネラル・エレクトリックやインテ…続き (10/20)

独SAPのシリコンバレーオフィス(カリフォルニア州パロアルト)

シリコンバレーの独企業に学ぶ 革新生む型づくり

 日本企業の「シリコンバレー熱」は冷めず、日本からの視察団が引きも切らず訪れる。しかし残念ながら「面白いけれども、文化が違いすぎる」との感想で終わることも多いようだ。
 なぜなら多くの日本企業にとっての…続き (10/6)

グーグルの新本社の内部のイメージ図(2015年2月公表)

サンノゼが大変貌 グーグルの超巨大オフィス計画

 「シリコンバレー」という言葉は世界的に知られているが、実はこの言葉は具体的な地名ではない。
 「シリコンバレーにおける主要都市はどこですか」と聞いたら、多くの人は「サンフランシスコ市だ」と答えるだろう…続き (9/29)

新着記事一覧

最近の記事

【PR】

TechIn ピックアップ

10月22日(日)

  • 「プライヴァシーの死」とGDPR:メディア美学者・武邑光裕による新連載「GDPR:データとインターネット〜EUが描く未来」
  • Face IDは今後の生体認証スタンダードになるか?
  • プログラミングを色鉛筆のような“表現ツール”に―DeNA、小学校に学習アプリを無償提供

日経産業新聞 ピックアップ2017年10月23日付

2017年10月23日付

・ウェザーマップ、PM2.5や紅葉も観測、ひまわり8号画像を4倍に解析
・ソースネクスト、語学ビジネスを拡大 小型の通訳機器発売
・名大、未成長iPS簡単排除 高濃度アミノ酸培地で
・店長の快眠お助け ニューロスペースが吉野家と実験
・リケン、高周波ノイズをシートで抑制 車載電子機器向け…続き

[PR]

関連媒体サイト