米で乱立、動画配信 掛け持ちで高くつくことも
瀧口 範子(フリーランス・ジャーナリスト)

2016/5/26 6:30
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映画やテレビ番組のストリーミング(逐次再生)サービスが、本当にいろいろ出そろってきた。本来ならば、選択肢がたくさんあって喜ぶべきところだが、実際には「混乱している」という方が正しい。サービスごとの違いがわかりにくい上、新しい提携などで見られる作品がしょっちゅう変わっているからだ。

アマゾンも独自番組や投稿動画で動画配信に本腰を入れてきた

アマゾンも独自番組や投稿動画で動画配信に本腰を入れてきた

早くからサービスを提供し、よく知られているのはネットフリックス、アマゾン・プライム・ビデオ、Hulu(フールー)だろう。そのうちHuluは複数のテレビ局が創設したので、テレビ番組は強いだろう。

そうすると、ネットフリックスとアマゾンはどう違うのか。つい最近までは、ネットフリックスの方が品ぞろえで格段に上だった。映画、人気テレビ番組とまんべんなくそろっているのは、何と言ってもネットフリックスだったのだ。

アマゾンは、急ぎの配達が使い放題になるプライム会員への特典としてビデオ見放題がついていたのだが、整然としたネットフリックスと異なって作品が不ぞろいという感が否めなかった。まあ、無料でついてくる特典なので、文句のつけようもなかった。

だが、そのアマゾンがビデオ・ストリーミングに力を入れ始め、新しい戦略を2つ発表した。ひとつは、プライム会員にならなくても別建てでストリーミング・サービスが受けられるもの。こちらは現在のところ、月額ではネットフリックスより1ドル安い。しかも、品ぞろえの点でもかなり充実度が増している。

もう一つの戦略は、プロとアマチュアの中間くらいにいるクリエーターに、ビデオ作品を投稿させるプラットフォームを作ったことだ。ちょうどキンドルで電子書籍を自費出版する人々の中から、しっかりともうける作家が出てきたのと同じような仕組みをビデオでも提供する。

クリエーターの選択によって、一部はアマゾン・プライム・ビデオで見られるようになり、視聴者の方は掘り出し物の作品を見つけたりできる。

アマゾンはネットフリックスに引けを取らないストリーミング・サービスへの覚悟を見せたわけだが、この2社は最近はオリジナルの番組製作でも対抗してきた。

『ハウス・オブ・カード』や『トランスペアレント』など、それぞれに熱狂的なファンがつく人気を博し、これがアマゾン派とネットフリックス派を分けているようだが、本当のテレビ好きは両方とも契約しているということが多い。

たきぐち・のりこ 上智大外国語(ドイツ語)卒。雑誌社、米スタンフォード大客員研究員を経てフリージャーナリストに。米シリコンバレー在住。大阪府出身。

たきぐち・のりこ 上智大外国語(ドイツ語)卒。雑誌社、米スタンフォード大客員研究員を経てフリージャーナリストに。米シリコンバレー在住。大阪府出身。

これ以外にサービスはまだまだある。米3大ネットワークのCBSは古い人気テレビ番組も見られるサービスを提供し、衛星放送のディッシュは、主立ったテレビ・チャンネルから番組を提供するスリングを運営する。

見られる機器が制限されているが、料理やインテリア、エンターテインメント・ニュース、スポーツなど、映画よりもテレビが好きという向きならば、こちらがいい。

映画チャンネルのHBOも独自のサービスを2種類持つほか、有料のユーチューブもオリジナル作品や広告なしのビデオ視聴ができる。

高いケーブルテレビからストリーミング・サービスに乗り換えてくる人々を「コード・カッター」(コードを切ってケーブル契約を止めること)と呼ぶが、結局10ドル前後のサービスをこれもあれもと加えているうちに、ケーブルテレビの契約料とほぼ同じになったというオチもある。

少額を積み上げた結果、高額になってしまうという、インターネットの落とし穴がここにもあるのだ。

[日経MJ2016年5月23日付]

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