広島訪問を核兵器なき世界への一歩に

2016/5/12 3:30
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オバマ米大統領が広島を訪問すると発表した。原爆を実戦で使用した唯一の国である米国の現職首脳が被爆地を踏むのは初めてである。被爆者にはさまざまな思いがあろうが、核廃絶に向けた重要な一歩として歓迎したい。

今回の訪問には大きくふたつの意義がある。ひとつはオバマ氏が2009年のプラハ演説で唱えた「核兵器なき世界」の実現を促す効果だ。国際世論は演説を高く評価し、オバマ氏のノーベル平和賞受賞につながった。

その後の米ロ対立の再燃や、中国の台頭などで、核軍縮の機運はかなりしぼんだ。北朝鮮のように核開発に固執する国もある。

だからといって「どうせ夢物語だった」とあきらめてよいのだろうか。米欧とイランとの核合意のように粘り強い話し合いが実を結んだ事例もある。

オバマ氏は広島で「核兵器なき世界」を再び世界に提唱する声明を出す意向だ。ヒロシマだけでなく、ナガサキにも言及するという。当事者の日本が他人事でよいはずがない。安倍晋三首相が訪問に同行するのは当然である。

日本の安全保障は米軍の核の傘に大きく依存する。歴代政権は米国の顔色をうかがい、核廃絶を小声で唱えてきた。日米が一体で取り組める今こそ心置きなく大声を出したい。国際世論の高まりなくして、ロ中その他の核保有国を動かすことなどできない。

もうひとつの意義は、かつて戦火を交えた日米が歴史を省みて、平和の尊さを確認するよい機会になるという側面だ。大戦の前後でこれほど距離が縮まった外交関係は世界でもまれである。

米紙ワシントン・ポストは訪問決定の記事で、原爆投下について「多くの米国民が大戦終結のための必要悪だったと考えている」と報じた。オバマ氏の訪問は「謝罪の旅」ではなく、被爆者の意に沿わないかもしれない。

だが、米国内の反発を押し切っても被爆地を訪れ、歴史を次のページに進めたいとのオバマ氏の思いは日本人も共有できるはずだ。謝罪のあるなしにばかり注目しても何も生まれない。

オバマ氏が広島を訪れて本当によかった――。そういわれるかどうかは、その後の世界の核廃絶運動が少しでも前に進むかどうかにかかっている。日本人の一人ひとりが一翼を担う心構えを持ちたいものだ。

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