2018年11月21日(水)

ヤマハ発動機がシリコンバレーに拠点を構える意味
西城洋志(ヤマハ・モーター・ベンチャーズ・アンド・ラボラトリー・シリコンバレーCEO)

2016/5/13 6:30
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「シリコンバレー」と聞いてどのような印象をお持ちだろうか。成熟企業におけるシリコンバレー活用方法について、経験に基づく考えを共有したいと思う。ヤマハ発動機がシリコンバレーに拠点を構えた1つの理由は「非連続的な成長の可能性探索」だ。ここ10年間での家電・モバイル機器業界の激変は記憶に新しい。

ヤマハ発動機で表面実装技術やロボット事業のソフトウエア開発などに従事。2015年7月にヤマハ・モーター・ベンチャーズ・アンド・ラボラトリー・シリコンバレーを設立、ベンチャー投資を含めた新事業開発に取り組む。

ヤマハ発動機で表面実装技術やロボット事業のソフトウエア開発などに従事。2015年7月にヤマハ・モーター・ベンチャーズ・アンド・ラボラトリー・シリコンバレーを設立、ベンチャー投資を含めた新事業開発に取り組む。

この動きの中では「持つ者(既存プレーヤー)が負ける」可能性が高い。失うものがあるために出遅れる。失うものがない者は革新的な価値の提案で市場や顧客の支持を得る。その可能性に賭ける投資家の支援を得て急成長する。

こうした動きがすべての産業で起こるかどうかはわからない。だが、起こってからでは遅いので、その可能性を見ておこうという考えだ。

今後を見渡すと「ロボティクス」と「コネクティッド(つながる)」という領域で同様な革新が起きる可能性が非常に高いとみている。

ロボティクスは(1)センシング(2)データ解析と判断(3)アクチュエーション(作動)――の3要素を持ち、それらがクローズドループ(閉じた輪)でつながっている状態のものだ。ロボット掃除機や自動運転、ドローン(小型無人機)などがある。コネクティッドは、異なる産業や製品が情報的につながるようになり、それによって新たな価値を創出することだ。自動車の運転情報とそのデータに基づいた保険が代表例だ。

ロボティクスとコネクティッドが注目される背景には、センサーやロボット用制御機器の高機能化と廉価化、クラウドの普及によるデータ解析の容易性といった技術の変化がある。

最近のシリコンバレーでは、ロボティクスやIoT、人工知能(AI)の分野で多くのスタートアップ企業が生まれている。彼らは世界に新しい価値をもたらす可能性のある技術や事業の開発に全力を投じている。我々のような事業会社は彼らと戦略的パートナーシップを結び、「当社の興味分野における協業・投資」や「当社が持つビジネス・技術資産提供による成長支援」などを行っている。

彼らとの協業機会やシリコンバレーのエコシステム(生態系)の理解は当社内により多くの刺激を与えられると考えている。筆者がシリコンバレーに来て一番感じたのが「成熟事業会社の大きな可能性」である。ハードウエアとソフトウエアの融合によって新しい価値を創造することにおいて、どの産業のどの事業会社にも大きな「非連続的成長」機会があると思う。

米カリフォルニア州の試験場ではロボットライダー「「MOTOBOT(モトボット)」の走行実験が進む

米カリフォルニア州の試験場ではロボットライダー「「MOTOBOT(モトボット)」の走行実験が進む

この事例の1つに「MOTOBOTプロジェクト」がある。「無改造のオートバイを人型のヒューマノイドロボットが自律運転し、サーキット走行において世界最高のライダーをラップタイムで超越する」というものである。

当社はこのプロジェクトをシリコンバレーの研究機関とオープンイノベーション型で行っている。目的はロボット技術開発やオートバイの車両運動性能評価技術の獲得だが、それだけではない。「特定の用途に限定することで人間を超越する性能を発揮するのがロボット」と「既存のいかなる種類の車両にも後付けできる自動運転機能の可能性」の2つのメッセージの発信も含まれており、このプロジェクトで得られた成果を新事業開発につなげたいと考えている。

不確実で非連続的な成長においては「異分野との協業」は必須になる。それが日常的に行われる場所、それがシリコンバレーの魅力だ。

[日経産業新聞2016年5月10日付]

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