2019年8月21日(水)

教訓多い潜水艦輸出の失敗

2016/5/9 3:30
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質が良ければ、必ず売れる。高い技術を誇る日本企業には多かれ少なかれ、こんな発想がある。ところが、世界の強豪がひしめく軍事ビジネスでは、品質だけでなく、相手国に売り込む戦略と努力が勝敗を分けることもある。

フランス、ドイツと受注を競っていたオーストラリアの次期潜水艦事業で、日本は仏政府系の企業に敗れた。12隻で約500億豪ドル(約4兆円)の巨大事業であり、受注を逃したのは残念だ。この教訓をぜひ生かしたい。

防衛装備品の輸出を緩和して以来、この案件は日本にとって初の大型商談だった。官民が協力し、三菱重工業などが建造する最新鋭潜水艦「そうりゅう型」を売り込んだ。

スクリュー音が小さく、長い時間潜ることができる「そうりゅう型」の技術は世界最高水準であり、品質で負けたわけではない。

敗因のひとつは、現地生産や技術移転への取り組みにあった。今夏の総選挙をにらみ、豪州のターンブル首相は国内の雇用を重視していた。仏はこの点を踏まえ、12隻すべてを現地で生産することにしたという。

日本勢も豪州側の要望に応じ、現地生産も含めた計画を提示してはいた。だが、日本企業には未知の経験であるうえ、「虎の子」の潜水艦技術が流出しかねないという不安もあり、仏独に比べると腰が引け気味だった。

もうひとつの敗因は受注に向けた体制の違いだ。仏企業は豪州法人のトップに、国防省にパイプがあるオーストラリア人を起用し、豪州政府への売り込みに力を入れたという。豪州側がどんな計画を望んでいるのか、フランスは早く把握できたとみられる。

日本はこうした反省を踏まえ、企業と政府が協力して海外の情報を集め、輸出戦略を練る体制を整えるべきだ。長期的には、日ごろから友好国との安全保障協力を積み重ね、信頼関係を築いていくことが、装備品の輸出につながることは言うまでもない。

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