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若者と子を見捨てぬ世界と日本に

若者や子どもがしっかりと教育を受け、定職に就く。かつては当たり前だったこのことが、難しくなっている世界の現実がある。きょう5月5日のこどもの日に考えてみたい。

持続可能な経済と社会の安定の実現には、若者や子どもを見捨てず、その健全な成長と自立を後押しする必要がある。世界と日本は支援を惜しんではならない。

国際労働機関(ILO)によれば、世界の15~24歳の若年層の失業率は2015年に13%超と12年ぶりの水準となったようだ。

テロ生む高失業に手を

経済危機が起きると若年層は最初に職を失い、景気が回復局面に転じても仕事に就くのは最後になる、といわれる。すでにリーマン危機から7年半あまり過ぎたが、危機の後遺症は若者に重くのしかかったままだ。

欧州はその典型だ。ギリシャやスペインの25歳未満の失業率は今も40%を超えている。

パリとブリュッセルは過激派組織「イスラム国」(IS)によるテロに見舞われた。実行犯の多くは北アフリカなどからの移民2世、3世だったとされる。

学校や就職での差別や疎外感に苦しみ、過激思想に傾倒した移民系の若者は多い。シリアとイラクに渡った若者の一部が戦闘員として欧州に潜伏しているならば、テロ再発の危険は残る。

テロ対策の強化はもちろん重要だ。しかし、中長期でみて大事なのは、移民系の若者を地域社会に包摂していく対策だ。差別や偏見を取り除く地道な取り組みが教育現場や地域で求められている。

同時に、南欧を中心とする国は硬直的な労働市場を柔軟にして、若者が仕事に就きやすくする改革を急がなくてはならない。

移民系若者の高失業がテロの温床になっていた可能性がある。彼ら彼女らにきめ細かな職業訓練を実施し、職を見つけやすくすることはテロ対策でもある。

中東・北アフリカでも若年者対策は急務だ。この地域の若者を対象にした世論調査によると、ISが人材を引き寄せる理由として最も多かった回答が「雇用機会の欠如」だった。

影を落とすのが、地域の若年人口の急膨張だ。たとえば、イエメンでは24歳以下が総人口の約6割を占める。人口爆発を吸収できる雇用の場が少なく、若年失業率が20~40%台に高止まりしている。

ドイツの社会経済学者であるグナル・ハインゾーン氏は「ユース・バルジ」(過剰なまでに多い若い世代)と呼び、行き場を失った若者が犯罪や戦争などに走る可能性に警鐘を鳴らしていた。

こうした人材がISなどに流れ、シリア内戦や欧州のテロに加担する動きは看過できない。

中東・北アフリカ諸国は資源に過度に依存しない経済構造をつくりつつ、もっと若年層に雇用の受け皿を用意する努力をすべきだ。先進国も一部は難民や留学生として受け入れてほしい。

米経済は先進国の中では比較的堅調だ。だが学生ローンの負担が若者を苦しめている。全米で約4千万人の学生と卒業生が借金を抱え、総額は1兆ドルを超えている。

所得や資産の格差は広がり、大学進学をあきらめる若者も少なくない。ローンを借りやすくしたり、金利負担を軽減したりするといった対策は要る。次期大統領は学生ローン問題解決に有効な対策を実施してほしい。

過度な負担増を避けよ

少子化が進む日本で忘れてならないのは、社会保障の効率化だ。増え続ける高齢者を支える社会保険料や税の負担が増え続ければ、若者がこの国で暮らすことにますます息苦しさを感じるだろう。

先進国で最悪の財政を立て直す必要があるのも、いまの子どもや、これから生まれる将来世代に過大な借金のツケを回さないようにするためだ。

日本の子ども・子育て支援などの家族関係支出は、先進国の中でも少ない。社会保障の歳出を組み替え、子ども・子育て支援にもっと予算を振り向けるべきだ。

今夏の参院選からは選挙権年齢が18歳以上に引き下げられる。各党は安易なバラマキではなく、骨太な若年支援策を競ってほしい。

「ナポレオンの登場以降の『若者が勝者の時代』が終わり、『若者が敗者の時代』が到来しつつある」とマーク・マゾワー米コロンビア大教授は指摘している。

だからといって若者に希望を与えられない世界や日本であってはいけない。各国・地域の政治指導者は勇気を持って、若者受難の局面を変えてほしい。

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