2019年9月16日(月)

世界有数の観光大国になるために

2016/4/30 3:30
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政府が外国人訪日客数の新たな目標を定めた。2020年に4000万人、30年に6000万人の来日を目指すという。15年実績の1973万人に比べて2倍、3倍の外国人を迎えるためには、宿泊施設や空港など、受け入れ体制の抜本的な改革が要る。

従来の目標である20年2000万人、30年3000万人から大きく上方修正した。新目標を14年時点の国際ランキングに当てはめると、4000万人は6位、6000万人は4位になる。

カギは規制緩和とIT

15年の実績は16位相当だから、実現すれば大幅なランクアップになる。現在、世界全体の外国旅行者は年間11億人台だが、30年には18億人に増えると予測されている。けん引役はアジア諸国・地域だ。この成長を取り込むため、観光に力を入れる姿勢は正しい。

ただし、現状でもすでにホテル不足などが混乱や不満を生んでいる。2倍、3倍の旅行者を受け入れるには、政府、企業、地域が横断的に協力し、快適な旅ができる体制を整える必要がある。

第1は規制の緩和や慣例からの脱却だ。民泊や通訳案内では規制緩和を進め、外国語に堪能な人などが受け入れに広く参加できるよう後押ししたい。個人がマイカーで旅行者を運べるネット配車サービスも歓迎されるだろう。

民泊や配車サービスは、すでに海外で普及している。日本だけ使えないのでは旅行者が戸惑う。これらの新サービスやガイドの増加は地方への誘客にもつながる。

美術館や博物館など日本文化を学べる施設も、もっと観光に目を向けたい。日本史の知識がない人でも理解しやすい解説文を考え、多言語に翻訳して表示するなど、工夫の余地は大きい。施設を持つ自治体は近隣で連携し、一緒に魅力をアピールしてはどうか。

第2はIT(情報技術)の一層の活用だ。今後増える個人客の多くは、出発前や旅行中の情報収集にインターネットを駆使する。しかし日本では、旅行者がネット接続できる場所が少ないとの不満は以前から多い。整備を急ぎたい。

入国時や宿泊施設へのチェックインでは、顔認証などのITを活用し本人確認をすれば時間が短縮できる。鉄道や催しのチケット購入も、欧米やアジアでは事前に海外から購入・予約が可能な場合が多い。同様の対応が求められる。

熊本地震のような大災害が起きれば、訪日旅行への不安が外国で広がる。東日本大震災では政府や地元企業がマスメディアやネットを通じ、被災地以外の地域の安全性や被災地の復興状況をきめ細かく伝えた結果、震災の翌年から訪日客は増勢に転じた。

今回の震災でも、これまでの経験を生かし、正確な情報を世界に伝えたい。訪日中の外国人に対し、携帯電話などを通じ、災害情報を多言語で提供できる仕組みを整えることも大切だ。

第3はインフラの整備だ。新たな目標を達成するためには、日本の玄関である首都圏空港のさらなる拡充が欠かせない。羽田空港について国土交通省は東京上空の飛行ルートを解禁することで滑走路の利用効率を上げ、新規の発着枠を捻出したい考えだ。

住宅地の真上を飛行機が飛ぶことについて、騒音や落下物を心配する声は当然ある。政府は住民や自治体に説明を尽くして不安を解消し、早期の合意形成をめざしてほしい。成田空港も3本目の滑走路の建設構想が動き出しており、国や空港会社、関連自治体を交えた協議が始まっている。

地方空港に海外路線を

こうした一連の能力拡張が実現すれば、首都圏2空港の発着枠は年間100万回の大台に届き、ニューヨークやロンドンとほぼ肩を並べる水準になる。東京の国際都市としての魅力を磨くためにも、空港の強化は重要である。

首都圏以外の空港の活用も進めたい。7年前に開港した静岡空港は中国を中心に海外10都市と結んでおり、立派な国際空港になった。他の地方空港も地元の自治体や経済界と連携し、海外路線の呼び込みに力を入れたい。

訪日客の増加には、消費など目に見えやすい効果以外にもプラス面がある。日常の中で外国人とふれあう機会が増えることだ。

若い起業家などが古民家や古ビルを改装し、カフェのある安宿を開く例が増え、地元住民と外国人が交流する場になっている。民泊もこうした場として育てていくことが可能だろう。

世界でもトップ級の観光大国を目指すには、皆が意識を変える必要がある。果敢に取り組みたい。

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