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一億総クリエーター時代 コンテンツ課金に商機

藤村 厚夫(スマートニュース執行役員)

インターネット上のメディア、特にニュースメディアについて、米ニューヨーク・タイムズのような例外的な事例を除き、読者への課金に成功したといえるケースは多くない。コンテンツ単位での課金はもちろん、定期購読型でも、成功への道のりは険しいというのが一般的な見方だ。

「note」利用者から依頼を受け、イラストを描く女子中学生

だが、広告頼みの一本足打法を見直す動きが内外で勢いを示しつつある。海外では、有力報道機関から集めたニュースに記事単位で課金できるサービス「Blendle(ブレンドル)」が話題を呼んでいる。利用者は、さまざまな著名メディアの記事から好みのものを選ぶ。読んで気に入らなければ返金も可能というユニークさだ。

国内でも新しい課金手法に目をつけたメディアやサービスが登場している。例えば2011年の創業当初から、広告依存を排しコンテンツ課金事業を推進してきたピースオブケイク(東京・渋谷)。ライターやマンガ家、ミュージシャンらに、多彩な課金システムを組み込んだプラットフォーム「note(ノート)」を提供して勢いをつけている。

ノートがユニークなのは、ライターらクリエーターが、自らの判断でコンテンツを無料から1万円の幅で値付けして販売できることだ。資料価値のある論文1本に5000円の値段をつけ、「百万円以上の売り上げ」を得たとするライターも現れた。マンガや楽曲を売るケースも多いという。

同じように、投稿型の小説やマンガサイトでも、コンテンツ単位での販売機能をもったサービスがいくつか誕生している。

DeNA子会社のエブリスタ(東京・渋谷)が運営する投稿サイト「E★エブリスタ」はその一つだ。スマートフォン(スマホ)で気軽に読める作品の投稿をつのり、利用者に課金できる。集まった作品は200万点を超える。

課金へと目立った動きを見せてはいないものの、サイト開設前から膨大な作品を集めて話題を呼んだ「カクヨム」のような有力投稿サイトも誕生している。いずれ、課金や掲載した作品の出版などを通じて多様な収益事業へと向かう可能性が高い。

ふじむら・あつお 法政大経卒。アスキー系雑誌の編集長、外資系IT(情報技術)企業のマーケティング責任者を経て2000年にネットベンチャーを創業、その後の合併でアイティメディア会長。13年から現職。東京都出身、60歳。

ジャーナリズムの分野では、米国などでは事例が出てきている、読者に事前に拠出金を募るような「クラウドファンディング」型メディアもいずれ出てこよう。

背景には、広告収入追求への疲労感がある。モバイル分野で広告市場の成長が期待されているが、その多くは、グーグル、フェイスブックといった超大手プラットフォームに集中している。また、記事のスムーズな表示を阻害する広告を、消費者があからさまに忌避するようになってきたこともある。

一方で、新興メディアの立役者の一人であるアリアナ・ハフィントン氏が「自己表現は新しい娯楽だ」と述べたように、ブログ交流サイト(SNS)、音楽など、自己表現へ高い意欲をもつ、在野のクリエーターは増え続けている。日本も「一億総クリエーター」時代といえるかもしれない。

ノートが卓抜なのは、プロからセミプロまで様々なクリエーターのニーズに応える「プレミアム会員」制をスタートしたことだ。1カ月500円を払えば、時間指定の投稿や月額で継続課金する「マガジン」などの機能を使える。

このように「自己表現」という娯楽に目覚めた数多くのクリエーターに対して課金することも、新たな収入源としての可能性を秘めている。

[日経MJ2016年5月2日付]

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