2019年9月16日(月)

復旧へ中小苦闘 熊本地震、工場や製品被害
「想定外」でマニュアル通じず

2016/5/2 3:30
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熊本地震で被災した企業は懸命の復旧作業を続けているが、中でも大手企業の事業所などとは違い、人手も少なく危機管理の経験も乏しい地元の中堅・中小企業は苦戦を強いられた。余震が続く中、想定外の地震で直接、間接の影響を受けた九州の企業の奮闘ぶりを見た。

「東日本大震災後に作った危機管理マニュアルは役に立たなかった。まさか2度も大地震にも遭うとは」(熊本市の移動棚メーカー、金剛)「豪雨や台風の備えはしていたが、地震への備えはしていなかった」(ヤマックス)――被災地の企業の多くは、予想もしなかった災害に見舞われ、その対応に追われた。

■社員総がかり

倒壊・損壊した金剛の在庫保管場所(熊本市)

倒壊・損壊した金剛の在庫保管場所(熊本市)

金剛は14日の最初の地震で製造機械が損傷を受け、生産ラインが止まった。商品の移動棚も倒れ、出荷できない状態に陥った。工場の屋根には大きな穴が空き、15日から約30人の従業員で復旧作業を始めた。

ところが16日未明の本震が追い打ちをかけた。ベニヤ板4枚ほどの穴は10枚程度まで広がり「穴を防ぐのは無理だ」と田中稔彦社長は判断。営業幹部を含めた社員総がかりで機械に雨を防ぐブルーシートをかぶせる作業に切り替えた。

17日には被災地に容赦のない大雨が降り工場は浸水。工事業者の協力を得て、再び機械を守るために屋根の穴を埋める作業を優先したが、工場の浸水が収まるまでに2日かかった。

それでも懸命の作業で22日に生産ラインが復旧し、25日には工場の稼働までたどり着いた。田中社長は「熟練従業員の臨機応変な提案で何とか工場を守ることができた」と話す。

コンクリート製品のヤマックスは生産設備の損傷はなかったものの、熊本県宇城市内の2つの工場で製品の在庫が崩れ、製品が破損した。本社ビルも一部損壊。18日に開いた緊急役員会では、本社倒壊の恐れが出た場合には、営業や経理など事務部門の社員も工場へ分散させ、顧客の対応に当たることを決めたという。幸い本社ビルは検査で倒壊の恐れは無いと判明し、25日からは工場も稼働した。

■取引先が被災

直接的な被害は免れたものの、取引先やインフラの被災で影響を受けている企業も少なくない。大分県津久見市で製菓材料や包装資材の通販を手掛けるタイセイは、地震の影響で熊本向けの配送ができず受注をストップした。しかし、より深刻なのは、別府や湯布院向けの土産物の製造販売を手掛ける子会社のつく実や(同)だ。

工場の屋根に穴が空いたため、生産設備にブルーシートをかける従業員(熊本市)

工場の屋根に穴が空いたため、生産設備にブルーシートをかける従業員(熊本市)

今年のゴールデンウイークは曜日の並びが良いことから、別府や湯布院の宿泊施設は予約でほぼ埋まっていた。つく実やも販売増を見込み、特産のミカンを使った菓子やマーマレードなどを増産していた。

だが余震が続き、宿泊施設は「連休前半の予約は6割ほど減った」(別府市のホテル経営者)。つく実やは賞味期限のある食品が主力であるだけに「余震がおさまり、観光客が戻ることに期待するしかない」(佐藤成一タイセイ社長)。大分県内では同じような状況の土産物メーカーが多いという。

画一的な営業をやめ、被災状況に応じた営業を行う外食チェーンもある。うどん店を運営するウエスト(福岡市)は営業を再開する店舗のメニューを絞った。カツ丼など高温の油を使うメニューは余震で危険なため外し、うどんやおにぎりなどに限って営業している。弁当店「ほっともっと」を運営するプレナスは、断水が続く店舗には福岡市内から水を運ぶ一方、人手不足もあって営業時間を変更するなど、店舗の状況に応じた運営を行っている。

(熊本支局長 松沢巌、大分支局長 藤井利幸、西部支社 猪俣里美)

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