社会保障、高齢者に偏らず 首相インタビュー
安倍晋三首相は12日、日本経済新聞のインタビューに応じ、今後の社会保障政策についてこれまでの高齢者中心から「全世代型」に見直す意向を表明した。そのための施策として幼児教育の無償化などを挙げ、財源として教育に使途を限定して国債を発行する「教育国債」も検討する考えを強調。北朝鮮情勢では核の完全な放棄が対話の条件だとの認識を示した。

首相は「高齢者向け給付が中心となっている社会保障制度を、全世代型社会保障制度に改革していく」と強調した。そのための幼児教育の無償化や高等教育の負担軽減などは「財源がなければ実現できない」と指摘。「最後は私の責任で強い決意でしっかり財源を確保していく」と明言した。
一定の収入を得たら授業料を返す出世払い方式も含め、教育国債を財源とする考えには「排除するより様々な議論をしっかりとしていきたい」と述べ、選択肢の一つだとした。自民党の小泉進次郎氏らが提唱する「こども保険」にも「財源を作り出すための方法について活発な議論をすることは大切だ」と語った。
首相はデフレ脱却の目安について「物価が2%を超えて、日銀が安定的に推移していくという確信を持った段階になることが大切だ」とし、2%という消費者物価上昇率の目標を堅持する考えを示した。来春任期が切れる日銀の黒田東彦総裁については「非常に成果を出しているし、デフレではないという状況を作り出してくれた。全面的に信頼している」と評価した。
2019年10月の消費税率10%への引き上げに関しては「社会保障制度を次世代に引き渡し、市場や国際社会から国の信認を確保するためにも必要だ」と述べたうえで「予定通りの実施を考えている」と強調した。
核・ミサイル開発を進める北朝鮮情勢では「北朝鮮が完全な非核化にコミットした上でようやく話し合いができるということは、米国、韓国とも一致している」と指摘。北朝鮮が核開発プログラムを放棄することが対話の条件だとの見解を示した。
日中関係では、年内に日本で日中韓首脳会談を開くことができれば、日中平和友好条約の締結から40周年にあたる18年は「私が訪中する番だ。その次に習近平国家主席に訪日してもらいたい」と相互訪問を呼びかけた。
憲法改正に関し、5月に20年の新憲法施行を目標に掲げたが「スケジュールありきではない」と述べ、改憲論議は「党に任せたい」と語った。
衆院解散・総選挙は「まったく考えていない」とし、来年秋の自民党総裁選で3選を目指すかでも「任期は1年も残っている。結果を出していくことが大切だ」と述べるにとどめた。
インタビューは日本経済新聞の長谷部剛東京本社編集局長が首相官邸で約30分間行った。
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