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企業の自家発電、原発7基分増える 災害対応や売電狙う
JXエネやレンゴー、設備増強

2016/3/11付
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企業による自家発電設備の新設や増設が広がっている。東日本大震災後、日本全体で原子力発電所7基分(約700万キロワット)に相当する設備が増えた。震災後に電力不足や計画停電に悩まされた企業は非常用電源として設備を増強。電力会社間の競争を促すため4月に電力小売りが全面自由化されることを受け、自家発電で余った電気の外部への販売拡大もにらみ、発電事業者として存在感を増している。

JXエネは家庭向けにも電力小売りを始める(茨城県神栖市)

JXエネは家庭向けにも電力小売りを始める(茨城県神栖市)

茨城県神栖市で4月、出力12万5千キロワットの大型火力発電設備が稼働する。石油元売り最大手のJXエネルギーが鹿島製油所内に設けた自家発電設備だ。原油を精製する過程で生まれた重油を燃料にする。「コスト競争力は石炭火力以上」とJXエネ幹部は胸を張る。電気は外部に販売する。

企業向けに加え、4月から家庭向けにも電力小売りを始める。同社の国内発電設備の総出力は160万キロワットを超え、震災前より1割以上増えた。電力小売り拡大には自前で電源を抱え、電力を安定供給することが必要と判断。2030年に400万キロワットへの引き上げを目指す。

経済産業省によると、15年9月末時点の自家発設備(出力1千キロワット以上)の総出力は6084万キロワット。11年3月末比13%増えた。足元ではさらに増えているとみられる。

自家発電を最新機器に更新し、発電効率を高める動きも増えている。JFEスチールは発電効率を従来より3割高めた新型発電設備を千葉市の製鉄所に導入。19年には川崎市の製鉄所でも新型設備に更新し、鉄鋼生産に使う電源を自前で賄う。

段ボール国内最大手のレンゴーも兵庫県尼崎市の工場で自家発電用の新型ガスタービンを導入した。段ボール原紙の生産は電気や蒸気を大量に使う。自家発電は生産コストや環境負荷の軽減に直結する。

震災後、電力大手の発電インフラの損傷により計画停電が起き、企業の事業活動にも影響が及んだ。事業継続計画(BCP)の観点から自前で最低限の電源を確保する動きも相次いでいる。

主に自家発電増強に動いているのは鉄鋼、化学などの素材や石油関連産業だ。製造工程で生まれる副生物を発電の燃料に使えるほか、自社でも電力を大量に使う。自家発電の使用量のうち、鉄鋼が全体の3割を占める。化学、紙パルプ、石油関連産業を含めると全体の8割近くに達する。自家発電は事業の競争力を高めるツールにもなる。

電力小売り全面自由化や固定価格買い取り制度を受け、太陽光や風力、バイオマス(生物資源)といった再生可能エネルギーも環境に優しい自家発電設備として注目を集めている。

震災で大きな被害を受けた日本製紙石巻工場(宮城県石巻市)。隣接地で出力14万9千キロワットのバイオマス発電所の建設が進む。石炭に間伐材などを混ぜ、燃やして発電する。18年3月に稼働させ、売電で収益を上げる。

「製紙会社から総合バイオマス企業へ脱皮する」。日本製紙の馬城文雄社長は語る。紙の原料用の木材の調達など培ったノウハウを生かした戦略事業に位置付ける。

オリックスは18年春までに太陽光発電所を増設。総出力は現在の2.6倍となる90万キロワットに膨らむ予定だ。風力発電国内最大手のユーラスエナジーホールディングスは20年までに風力発電所の能力を3割増やす。

日本経済新聞が実施した環境経営度調査では、主要製造業の再エネへの国内投資額は20年度に13年度比2.1倍に増える見通しだ。エネルギーの安定確保のため、今後も自前で電源をつくる動きが広がりそうだ。

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