トップ > 特集 > 被災地の今 > 記事

復興住宅、孤独死の影 話す場作り生活応援
歩みは続く(1)

2016/3/3 3:30
保存
共有
印刷
その他

東日本大震災や東京電力福島第1原子力発電所事故の避難者が多く住む福島県いわき市。昨年12月上旬、畑の側溝で1人の男性の遺体が見つかった。60代の男性は近くの災害公営住宅(復興住宅)の住民だった。

市などによると、独居の男性は10日ほど前に側溝に転落したとみられるが、周りの住民は男性がいなくなっていることに気づかなかった。

2年前に完成したこの復興住宅には約40世帯が入居し、住民の約4割が65歳以上の高齢者。仮設住宅のように住民が集まるスペースはない。女性入居者(86)は男性宅の郵便物がたまっているのには気づいていたが「どんな人が住んでいるのか知らなかった」。別の女性入居者(84)も「男性はおとなしい雰囲気で、ほかの住民との交流はなかった」と話す。

復興住宅の高齢化率が50%以上で「限界集落」と同じ状況の宮城県女川町(人口約6800人)。稲葉ふじ子さん(91)は離島の自宅が倒壊し、2年前に仮設住宅から町中心部の復興住宅(約200世帯)に移った。

■「さみしいんだ」

独居の稲葉さんは毎日、話し相手を探して敷地内を散歩するが、知人に会うことはほとんどない。「みんな部屋にこもりがち。数日誰とも話さないことがあり、夕方になるとため息が出てしまう」。仮設住宅では玄関先や縁側で住民同士が話しやすい雰囲気があった。「こんな立派な家に住まわせてもらってありがたいけど、さみしいんだ」とこぼす。

仮設住宅から復興住宅に移り、生活再建に踏み出した被災者。自宅を再建する予定のない高齢者にとっては「ついのすみか」だ。しかし、仮設住宅よりも建物の造りが整っているがゆえに孤立を生んでしまう。

21年前に起きた阪神大震災の仮設住宅や復興住宅では、誰にもみとられずに亡くなる「孤独死」が社会問題化した。入居を急ぐあまりコミュニティーの維持まで配慮が及ばず、集合スペースが少なかったことも増加の一因とされ、復興住宅の孤独死は2015年までに897件に上った。

「東北は神戸より厳しい状況だ」。阪神と東北で被災者支援に携わるNPO法人「よろず相談室」(神戸市)の牧秀一理事長(66)は指摘する。東北はもともと過疎が深刻な地域が多く、震災後に子供世帯が内陸部に転居して親世帯との分離も進んだ。「近所付き合いが濃い地域の一戸建て住宅に慣れた高齢者にとって、集合住宅の『鉄の扉』は重く分断されていると感じる」と強調する。

■新たな枠組みを

高齢者の孤立、そして孤独死をどう防ぐか。被災地の模索は続く。

宮城県石巻市内最大の集団移転地で、今後約1200世帯以上の入居を見込む「新蛇田地区」の復興住宅。住民同士の交流を深めようと毎朝のラジオ体操、週1~2回のカラオケ大会や料理イベントが開かれている。

同地区以外の住民も参加できる。主催する石巻仮設住宅自治連合推進会の内海徹事務局長(69)は「震災前の住所や仮設住宅で一緒だった住民同士が近況を語り合える場にしたかった」と狙いを語る。2月上旬、餅つき大会に参加した住民の佐久間敏子さん(68)は、1年半ぶりに会った地元の友人との会話を楽しみ「元気をもらえた」と笑顔だった。

NPO法人「3.11被災者を支援するいわき連絡協議会」(福島県いわき市)は復興住宅での自治会設立の支援に乗り出している。スタッフの遠藤崇広さん(41)は「イベントの内容や告知の仕方の工夫で住民の参加率は大きく変わる。熱意ある自治会長を選ぶことがコミュニティー構築の第一歩だ」と話す。

孤独死問題に詳しい淑徳大の結城康博教授(社会福祉学)は「復興住宅に移っても高齢者が孤立していては生活の復興とは言えない。仮設住宅に常駐していた支援員を復興住宅にも配置するなど各自治体が支援の新たな枠組みを考える必要がある」と指摘している。

    ◇

震災と原発事故から5年。復興に向けて歩み続ける被災地と被災者の課題を探る。

保存
共有
印刷
その他

電子版トップ

電子版トップ特集トップ