石原氏喚問、晴れぬ謎 百条委「豊洲は都政の大きな流れ」
「交渉経緯の報告、記憶ない」
東京都の豊洲市場(江東区)を巡る問題で、都議会の百条委員会は20日、石原慎太郎元知事を証人喚問した。石原氏は「豊洲移転は都政の大きな流れで、逆らえなかった」と自らの主導を否定。東京ガスとの用地売買交渉や契約についても報告を受けた記憶はないとした。百条委はこれまで4回にわたり計21人を証人喚問したが、移転決定や交渉の過程を十分に解明できたとは言い難い。

石原氏の喚問は同氏側が体調不良を理由に時間短縮を要請し、休憩を挟み計約1時間行われた。
石原氏は、ガス工場跡地である豊洲地区への築地市場(中央区)の移転が決まった経緯について、1999年の初当選時、前任の青島幸男氏からの引き継ぎ文書に豊洲移転を示唆する記載があったと説明。決裁者としての責任は認めながらも「市場を豊洲に移すというのは都庁全体の大きな流れ。私も逆らいようがなかった」と述べた。
ただ、元部下の証言は異なる。大矢実・元中央卸売市場長は11日の喚問で「(石原氏の就任直後は)築地市場の再整備など5、6案が出ていた。『既定路線』という説明は違うと思う」と述べ、複数の案から最終的に石原氏が豊洲移転を判断したと証言している。
石原氏は東ガスとの用地売買交渉については、腹心の浜渦武生元副知事に一任していたと強調。「向こうは売りたくない、こちらは買いたくてしょうがないという複雑な交渉。いちいち調整に立ち入って差配する問題ではない」と、詳細な報告を受けなかったとした。
都は2011年3月、土壌汚染対策費約586億円のうち東ガスの負担上限を約78億円とし、追加負担を求めないことで同社と合意。この交渉やその後の契約についても「報告を受けた記憶はない」などと繰り返した。
これについて、岡田至・元市場長は18日の喚問で「知事にブリーフした際、東ガスが一部負担する考え方や、その額が約80億円となることを説明した」と明言している。
石原氏が語気を強めたのは、小池百合子知事による移転延期の判断。「安全と安心がこんがらがっている」と強く批判した。速やかな豊洲への移転をあらためて主張し、「科学者が豊洲は安全と言うのに、なぜ移転しないのか不可解だ。不作為の責任が問われるべきだ」と述べた。
百条委は4月4日にも元都幹部3人を喚問する予定だが、これまでに交渉のキーマンとされた浜渦氏や石原氏らの喚問を終えた。質疑は計約20時間に及んだ。
証言には食い違いも目立つ。百条委の委員からは「なお疑問点が多い」「証人が真実を明らかにしていない」などの不満も漏れ、石原氏の再喚問を求める声もある。
小池知事周辺は「石原氏も浜渦氏も『記憶にない』に終始し、真相を語っていないのではないか。無責任だ」と批判。最大会派の自民党に対しても「追及しているように見えない。出来レースとみられても仕方がないのでは」と話した。
都の幹部は「もともと今回の百条委は、7月の都議選をにらんだ各会派のパフォーマンス。何も明らかになっていない」と冷ややかにみている。