エコノミー症候群防げ 段ボールベッド提供へ
全国段ボール工業組合連合会(東京)は20日までに、段ボール製の簡易ベッドを地震被災地の熊本県益城町に提供することを決めた。避難所での雑魚寝の解消に向け5千台程度の供給を目指す。簡易ベッドは体育館などの床に直接布団を敷くより寝心地がよく、高齢者も立ち上がりやすい。突然死の恐れのあるエコノミークラス症候群の予防効果も期待している。

段ボール製造会社のエス・パックス(鹿児島市)も簡易ベッド150台を用意。一部を20日、熊本市内の中学校の避難所に提供した。社長の下園広一さん(55)は「被災者に少しでも安心して避難生活を送ってほしい」と話す。
同連合会や同社が提供する簡易ベッドは高さ約35センチの段ボール箱を6個ずつ2列に並べ、上に縦約2メートル、横約90センチの板状の段ボールを載せる。箱には仕切り板を入れて補強し、約8トンの重さに耐えられる。ベッドの周りを段ボールの板で囲めば、寝ていても周囲から見られにくくなる。
考案したのは段ボールメーカー「Jパックス」(大阪府八尾市)の社長、水谷嘉浩さん(45)。現在、同連合会の災害アドバイザーも務める水谷さんは、5年前の東日本大震災で津波に遭って低体温症に苦しむ被災者が避難所で堅い床に直接布団を敷いて寝ている様子を見た。「寒さをしのぐには段ボールが一番」と考え、床からの高さなどを試行錯誤して簡易ベッドを作り上げた。
簡易ベッドは高さがあるので床から舞い上がるほこりの吸引を減らせる。足腰の弱い高齢者も容易に立ち上がれ、トイレなどにも一人で行きやすくなる。トイレの回数を減らそうと、水分の摂取を減らして長時間横たわっているとエコノミークラス症候群のリスクが高まるため、同連合会は「簡易ベッドは予防につながる」と期待する。
水谷さんは2014年の広島土砂災害や15年の関東・東北豪雨の際も避難所を訪れ、簡易ベッドを提供。水谷さんによると、現在は災害時に迅速に提供を受ける防災協定を段ボールメーカーと結ぶ自治体が増え、全国で200を超えている。
熊本県は簡易ベッドを提供する防災協定を結んでいないが、震度7を観測した益城町は住宅被害が大きく避難者も多いことから同連合会は提供を決めた。