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待機児童、減らぬワケ 3年連続増2.6万人

2017/9/2付
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保育所に入れない待機児童が増え続けている。厚生労働省が1日発表した全国の待機児童数は4月1日時点で前年比2528人増の2万6081人。女性の社会進出のテンポが予想以上に速いことに加え、保育所のニーズが集中する都市部で十分な施設を供給できない需要と供給の乖離(かいり)が広がっているためだ。政府は新たな「子育て安心プラン」で待機児童の解消を3年先送りしたが、財源確保と同時に原因を見極めた対策が必要となる。

保育施設は増えているが、予想以上に需要も伸びている

保育需要が膨らむ最大の要因は、結婚・出産後に働く女性が増えていることだ。企業の人手不足に拍車がかかっていることに加え、保育所が増えて子どもを預けやすくなったことから働くことを諦めていた女性の労働参加が広がっている。

■働く女性増加

女性の25~44歳の就業率は2011年の66.7%から16年に72.7%まで大きく上昇。生産年齢人口が減る中、日本の有効求人倍率は13年に1倍を超えて、上がり続けている。

子どものいる世帯の平均所得は1996年の年782万円をピークに減少傾向にあり、15年は708万円だった。景気回復でも生活が苦しいという子育て世帯は、16年に60%にものぼる。多くの世帯が共働きの必要に迫られ、保育所の入所希望者急増につながっている。

■整備ミスマッチ

必要なところにサービスが行き届かない問題もある。4月1日時点の保育の受け皿自体は前年比11万3千人分も増え、約284万人となった。これに対し、保育所への申込者は前年比約9万人増え約265万人だ。統計だけみれば保育の受け皿は申込者の「9万人増」を上回るペースで増えた計算だ。それでもいっこうに待機児童が減らない原因について日本総合研究所の池本美香主任研究員は、「保育需要の多い場所に施設がなくミスマッチがおきている」と指摘する。

待機児童が268人も増えた千葉県習志野市。JR津田沼駅南口の区画整理地区「奏の杜」で大型マンションの開発が相次ぎ若年人口がまとまって流入した。市は13年度以降、地区内に3カ所の認可保育所を設け、320人分の受け皿を用意した。ところが希望者数が市の見積もりを大きく上回り、同地区だけで市全体の2割に上る69人の待機児童が生じた。

昨年に比べて100人増えた港区は、15年の合計特殊出生率が東京23区でトップだ。湾岸部などで建設が相次ぐ高層マンションに若い世代が移り住む傾向が続いており、需要が保育所の整備に追いつかない。

厚労省は来年度から、保育所の定員見込みや待機児童の実態に関する情報を地域ごとに細かく公表するよう自治体に要請する。今は自治体単位となっている情報を、小中学校の学区程度に細分化して開示するよう促す。どの地区に保育所が必要か判断する材料が増えれば、ミスマッチの緩和につながる可能性がある。

■定義より厳しく

待機児童の定義を厳しくしたことも影響している。従来は親が育休中の場合は待機児童にカウントしないケースがあったが、厚労省は3月に定義を見直し、保護者に復職の意思があれば待機児童に加えることにした。特定の施設だけを希望しているなどの理由で、集計から除外された「潜在的な待機児童」も昨年より約2千人多い6万9224人に上った。

全国で待機児童の伸びが最も大きかった東京都大田区。保育定員を700人以上増やしたものの、待機児童は前年に比べて343人増えた。新定義を適用した影響でこれまで待機児童に含めていなかった保護者が育児休業中のケース(約200人)を含めたためだ。目黒区も同様だ。

大田区では相続に伴って土地が分割されたり、マンションが建設されたりして若い家族が転入。「転入増のほかに共働き世帯の割合も増えており、保育需要は今後も増える」(担当者)

中野区も待機児童ゼロを目指し保育定員を約1000人増やす計画を立てたが、実際に増やせた定員は300人強にとどまる。自治体にとっては女性らの労働参加率が上がれば地区内の景気や税収にもプラスに働くなど期待も大きい半面、待機児童対策が後手に回ればそっぽを向かれて人口流出を招くリスクも大きい。

今年度は横浜市など一部の自治体では「復職の意思が確認できなかった」として旧定義を採用している自治体もあり、待機児童にカウントされる子どもはさらに増える可能性がある。

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