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ブレトンウッズの闘い ベン・ステイル著

戦後の国際金融秩序巡る米英の攻防

第2次大戦中の1944年7月、戦後の世界経済の運営体制・国際金融秩序を確立すべく、44カ国の代表が米国のブレトンウッズで歴史的会議に臨んだ。そこで合意したブレトンウッズ体制の骨格は、(1)各国は金ないし米ドルを基準とした平価を設定し安定させる(2)この制度の運営に関わり、時には、つなぎの資金を供与する国際機関として国際通貨基金(IMF)を創設(3)基礎的不均衡が発生した場合にはIMFの承認を得て平価を変更、というものであった。

(小坂恵理訳、日本経済新聞出版社・4600円 ※書籍の価格は税抜きで表記しています)

本書は、この体制づくりに主役を演じた、英国代表のケインズと、米国代表のホワイトが、一方は衰退しつつある大英帝国を守ろうと、他方は圧倒的に有利になった国力を背景に覇権を握ろうと、知略を競って格闘する状況を、詳細に記述する。

著者によれば、(1)両者は各国の経済政策立案者の自主性と自由裁量を認めつつ国際協力を促す仕組みを作る点では一致していたものの、(2)ケインズは「新たな国際準備通貨を中心に据えた新しいグローバルな通貨制度」の下、為替レートの変更は容易な超国家的体制を目指し、(3)ホワイトは米国の経済力と金の保有で圧倒的に優位にある土台の上に、金と結びついたドルを中核に新たな国際機関による管理を組み込み、米国が主導権を握る体制を目指した。

できあがった体制は、米ドルに特権的地位を与えるホワイト案を色濃く残した。ただ、金ドル本位制の下でのドルの供給は、「量に限りある金に基づくものなのか、米政府が意のままに生産できるドルなのか」曖昧だった。供給する量が金との兌換(だかん)レートを維持する水準に一致する保証はなく、この矛盾から71年には兌換停止、体制崩壊に至ったと著者は判断する。

なお、本書は、ホワイトが旧ソ連に好意を寄せ、スパイ活動に加担していたとの見方を念入りに記述している。ブレトンウッズ体制構築への影響は明白にされないものの、国家間の激しい情報合戦に興味を持つ読者は、新鮮な謎解きを楽しめる。

なぜ米国に有利な国際金融秩序が作られ、今なおドル本位制が生き残っているのか。また、今日、米国を金融面で支える中国が、国際金融体制の大幅な再編を求め、IMFや世界銀行を横目に、自分達(たち)で「BRICS開発銀行」や「アジアインフラ投資銀行」を創設するのか。自国に有利な枠組みやルールづくりに奔走した国家間の闘いぶりをひもとく本書から多くのことが学べよう。

(学習院大学名誉教授 奥村 洋彦)

[日本経済新聞朝刊2014年10月12日付]

ブレトンウッズの闘い ケインズ、ホワイトと新世界秩序の創造

著者:ベン・スティル
出版:日本経済新聞出版社
価格:4,968円(税込み)

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