報道の自由侵害と日韓関係悪化を憂う

2014/10/10付
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報道の自由という観点からも、日韓関係の先行きを考えるうえでも極めて憂慮すべき事態である。ソウル中央地検が朴槿恵(パク・クネ)大統領の動静に関する記事を書いた産経新聞の前ソウル支局長を、情報通信網法に基づく名誉毀損罪で在宅起訴した。

問題となっているのは、8月に同紙のウェブサイトに掲載された記事だ。韓国の大手紙のコラムや「証券街の関係筋」の話などを紹介し、4月に起きた旅客船沈没事故の当日、朴大統領が男性と会っていたのではないかといううわさに言及した。これを受け、韓国の市民団体が刑事告発していた。

地検は前支局長の出国を禁止するとともに、3回にわたり事情を聴いていたが、記事の内容は虚偽で事実関係の確認もしていないとし、大統領の名誉を毀損したとして在宅起訴に踏み切った。

確かに、さしたる根拠もなく風聞に基づく記事を軽々に掲載した同紙の報道姿勢に問題がないとは言い難い。インターネット空間だからといって、何を書いてもいいわけではない。

とはいえ、韓国の検察の対応は明らかに度を越している。報道を対象に刑事責任を追及するやり方は、自由な取材と言論の自由の権利を侵害する。米国務省も「我々は言論と表現の自由を支持する」と懸念を示す。報道の自由は最大限に尊重されなければならない。

民主国家では通例、報道への名誉毀損罪の適用に極めて慎重な対応をとっている。検察は直ちに起訴を取り下げるべきだ。

韓国は戦後、長らく続いた軍事独裁政権を経て、ようやく民主化を達成した。それから30年近くがたち、自由と民主主義の重みは日本と共有しているはずだ。それにもかかわらず、報道の自由を規制する動きは、韓国の対外的なイメージを大きく傷つける。韓国はそのことを肝に銘じるべきだ。

日韓関係に与える影響も懸念される。日韓はただでさえ、歴史や領土問題をめぐって関係が冷え込んでいる。とくに日本では、いわゆる「嫌韓」の風潮も広がる。

韓国では、産経新聞は慰安婦問題を含めて同国に最も厳しいメディアとして知られる。仮に検察が大統領府の意向を踏まえ、意趣返しの意図も込めて前支局長を在宅起訴したのなら、とんでもない話だ。こうした動きは日本の「嫌韓」の流れを助長し、関係修復を一段と厳しくしてしまう。

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