2019年4月22日(月)

日本の競争力を高める特許の仕組みを

2014/9/28付
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企業の従業員が仕事で生み出した発明(職務発明)の帰属をめぐって、議論が高まっている。今の法律では特許権は最初は従業員個人に帰属し、企業は「相当の対価」を支払ってそれを譲り受ける仕組みだが、経済界を中心に「職務発明の特許は始めから会社に帰属させるべきだ」との声も強い。

これに応えて、政府の知的財産戦略本部が「職務発明制度の抜本的な見直し」を打ち出し、特許庁の有識者会議で具体案づくりが進み始めた。

法人帰属を求める声は、研究開発に巨額を投じる製薬業界や電機業界で特に強い。そもそも職務発明は会社の意思に基づいて、会社がリスクを取る形で資金や設備を提供して実行するものであり、法人帰属が妥当という意見だ。

「相当の対価」をめぐって会社と個人が法廷で争う事態が頻発すれば、研究開発そのものに尻込みする企業が増える可能性もある。米国の製薬産業の団体なども「今の制度は、日本における研究開発投資をためらわせるものだ」という見解を表明している。

組織運営の観点からは、処遇の公平性の問題もある。発明が会社の利益に貢献するまでには、生産や販売など各部門の協力が必要なのに、「なぜ研究者だけが特別扱いなのか」という疑問である。

こうした種々の事情を考えると、法人帰属への転換を検討すべき時期ではないか。諸外国を見ても英仏など法人帰属の国も多く、従業員帰属は必ずしも多数派とはいえない。

ただ、制度変更によって発明者の意欲が低下したのでは元も子もない。大企業の多くは研究開発に関する報奨制度を持っているが、それを一段と拡充するとともに、成果を上げた人をきちんと処遇する必要がある。

各企業に報奨制度の詳細や技術者の処遇について、情報開示を義務付けるのも一案だろう。それを比較することで、これから就職する研究者の卵や転職を考えるエンジニアがよりよい職場を選ぶことができる。

優秀な人材を採るために、各社が競って制度を拡充する効果にも期待したい。

社員と企業は、一方が得をすれば片方が損をするというゼロサムの関係ではない。メリットを分かち合い、結果として日本の技術力やイノベーション力が高まる仕組み作りに知恵を絞りたい。

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