チーズや肉の薫製、自宅で簡単 普通の調理具でOK
茶殻や果物の皮で香り

料理研究家でマノ料理学園副園長の間野実花さんが取り出したのは、餅焼き用の網と使い込んだ底が深めの鉄製の鍋、それに調理用の金属製のボウル。ボウルは鍋のふた代わりで、「100円ショップで買った」吸盤がボウルの底に取っ手として付いていた。土鍋や中華鍋があれば、それでもいい。コーティングがはがれる恐れがあるフッ素樹脂加工の鍋は避けよう。
家庭にある一般的な道具で、プロセスチーズとホタテ、鶏の胸肉の3つの食材を薫製にしてもらった。意外に短時間でどれもおいしそうなあめ色で香りたつものに仕上がった。
サクラやヒッコリーなど香り付けに使う薫製用の木材チップの代わりに今回使ったのは麦茶用の麦やお茶殻、食べ終わったトウモロコシの芯。ゴミの有効利用にもつながる。お茶殻とトウモロコシの芯はよく乾燥させておくのがポイント。お茶の葉をそのまま利用すると「香りが増す」。これからの季節だと、かんきつ類をむいたあとの皮を細かくし、よく乾燥させたものもいい。「優しい香りのものは、ホタテなど優しい食材に向く」と間野さん。

鍋の底にアルミホイルを敷き、その上にお茶殻などをのせて、強火にかける。煙が立ちのぼり始めたら、ざらめ糖を加える。食材にツヤを出す狙いで、無ければ砂糖でもいい。網をかけ、食材を載せ、ふたをして今度は弱火で一定時間待つ。それで出来上がりだ。鶏肉は火を止めた後、さらに約20分置けば余熱で中まで完全に火が入る。
チーズは溶ける場合があるので、網にアルミホイルを敷いておくと安心だ。鍋とふたの間に隙間があると、煙が外に漏れて部屋に充満してしまう。漏れる場合はアルミホイルで目張りするといい。鍋を火にかけている間は換気扇を回すのを忘れずに。「煙のにおいが髪や服などに付かないよう三角巾や白いエプロンを着用した方がいい」と間野さんはアドバイスする。
スモークしたものは温かな状態で食べるのもよし、冷まして食べるもよし。スモークする際の塩加減は「メーンの料理として食べるか、酒のつまみとしてかによって調整する」。あれこれ試行錯誤しながら、自分好みの薫製作りをするのはきっと楽しいはずだ。
高温で数十分~2時間

「狩りや漁で得た肉や魚に煙を当てて乾燥させることで、保存性を高めてきたのが薫製の始まり」と教えてくれたのは東京農工大学・フィールドサイエンス教育研究センターの樋口隆久さんだ。樋口さんは大学の公開講座などで薫製作りをこれまで教えてきた。
長期保存が可能なのは煙に含まれる殺菌成分が食材に浸透するからだが、「家庭でつくったものはなるべく早めに食べた方がいい」とアドバイスする。燻煙(くんえん)の仕方は温度によって3種類あるそうだ。冷燻法は15~30度の低温で数日から数週間燻(いぶ)す。温燻法は30~80度で数時間から十数時間、熱燻法は80~120度の高温で数十分から2時間程度かけて燻すやり方だ。家庭では熱燻法が一般的という。
薫製用の木材チップにはサクラやヒッコリー、リンゴなどがある。サクラは香りが強く、何にでもあうチップだが、中でも肉類など臭いの強い食材向きという。初心者なら食材は「かまぼこやソーセージなどがいい」と樋口さん。
(編集委員 堀威彦)
[日経プラスワン2014年9月27日付]
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