火星の人 アンディ・ウィアー著
宇宙サバイバル、直球のSF

人類が火星に到達したとして、はたしてそこで生活できるものなのか? 本書は間近に迫った宇宙時代の実態をリアリスティックに考察するハードSF。これぞSFの醍醐味という直球の傑作。
主人公は植物学者ワトニー。有人火星探査に参加したものの、想定外の砂嵐に巻き込まれ、ひとり火星に取り残される。次の部隊が到着するのは数年先。それまで生き続けるには、食料やエネルギーは無論のこと、まず水や空気といった生命維持に必要なものを確保しなければならない。
このゾッとするような条件下、ワトニーは持てる知識を振り絞る。その創意工夫の凄(すご)いこと。限りある資材を有効利用し、冷静に論理的に、そして情熱をも込めて乗り切っていく様子は、科学者的であると同時に、どこか農民的な潜在力を感じさせる。
またワトニーの様子を知った地球のスタッフが目の覚めるような支援を繰り出す処も心に響く。
不撓(ふとう)不屈の精神がユーモアと楽天性に支えられているとの洞察も鋭い。火星ほどヒドイ環境ではないが、それなりにキビシイ地球社会で、しぶとく生き抜くための活力をもらった気がする。小野田和子訳。
★★★★★
(ファンタジー評論家 小谷真理)
[日本経済新聞夕刊2014年9月17日付]
★★★★★ これを読まなくては損をする
★★★★☆ 読みごたえたっぷり、お薦め
★★★☆☆ 読みごたえあり
★★☆☆☆ 価格の価値はあり
★☆☆☆☆ 話題作だが、ピンとこなかった
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