/

春秋

きょうは3連休の中日。旅先でお読みの方も多いかもしれない。交通網の発達で、いまは遠方でもあまり時間をかけずに旅ができる。しかし時間そのものをさかのぼることは夢物語だ。もし昔に戻れたなら何をするだろう。自分の失敗を消すか、それとも誰かを救うか。

▼若い男が過去のある瞬間に繰り返し飛ばされてしまう。そんな場面を最近、日本の若者が創った演劇で見た。舞台は米ニューヨーク。行き先は2001年9月11日、世界貿易センタービルがテロに襲われる直前だ。この事件で亡くなった父の命を救おうと、男はビルへ急ぐ。迫る悲劇を前に、あの手この手で外へ誘うのだ。

▼何度試みても運命は変わらない。男の焦る気持ちやもどかしさが観客の心を揺さぶる。ついにまもなく起こる事件を予言してしまうが、父は一笑に付す。航空機の自爆テロなど想像できるはずもなかったからだ。現実にビルで働いていた人々も、きっとそうだったろう。日本の私たちも目を疑った。あの事件から13年たつ。

▼不測の事態を警戒する中、今年も遺族が追悼式に集い、オバマ大統領はテロとの戦いの再開を宣言した。「過去に向けられたる希望は凡(すべ)て痴である」とは哲学者・阿部次郎の言葉だが、それでも歴史の歩みは他にもなかったか問いたくなる。国と民族を問わず、不意に失われた命のそれぞれに愛(いと)おしむ人がいたはずなのに。

初割ですべての記事が読み放題
今なら2カ月無料!

関連キーワード

セレクション

トレンドウオッチ

新着

ビジネス

暮らし

ゆとり

新着

ビジネス

暮らし

ゆとり

新着

ビジネス

暮らし

ゆとり

フォローする
有料会員の方のみご利用になれます。気になる連載・コラム・キーワードをフォローすると、「Myニュース」でまとめよみができます。
新規会員登録ログイン
記事を保存する
有料会員の方のみご利用になれます。保存した記事はスマホやタブレットでもご覧いただけます。
新規会員登録ログイン