報道への不信ぬぐい去る責務

2014/9/13付
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朝日新聞社の木村伊量社長は「吉田調書」に関する記事を取り消し、謝罪した。慰安婦をめぐる報道についても「訂正が遅きに失したことをおわびする」と述べるとともに、第三者機関を立ち上げて検証する考えを表明した。失墜した信頼を回復するための取り組みを徹底してほしい。

吉田調書に関して、朝日新聞は5月20日付朝刊で「所員が所長命令に違反して撤退した」などと報じた。政府が公表した調書では、所長の命令は退避であって、それに違反して現場を離れたわけではなかった。

木村社長は「思い込みや記事のチェック不足などが重なったことが原因と考えている」と説明しているが、新聞をつくっていくうえでの基本動作に問題があったと言わざるを得ない。

慰安婦報道は、1980年代から90年代初めにかけて慰安婦を強制連行したとする吉田清治氏の証言を掲載。社内で検証した結果、これを虚偽と判断して、今年8月5、6日付朝刊の「慰安婦問題を考える」と題する特集記事で取り消した。

しかし訂正が報道から20年以上たち、93年の河野洋平官房長官談話に影響を及ぼし、朝日新聞の報道がもととなって慰安婦問題への対外的な非難を招いた、として批判を浴びている。

木村社長は訂正が遅れたことを謝罪し、国際社会に与えた影響などについては第三者機関で検証していくと語った。

2つの朝日新聞の訂正報道を通じて、なぜこうした記事が掲載されてしまったのか、なぜ誤りと分かったらすぐに取り消しができなかったのか、なぜ読者への謝罪が遅れてしまったのか、といった疑問は残る。

懸念されるのは今回の問題で、新聞に対する信頼がそこなわれるのではないかという点だ。日本経済新聞は「中正公平」の報道を今後も貫いていくが、報道への不信をぬぐい去る重い責務を朝日新聞は負っている。

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