ハケンアニメ! 辻村深月著 業界の空気、鮮やかに描く

2014/9/11付
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(マガジンハウス・1600円 ※書籍の価格は税抜きで表記しています)

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タイトルになっている「ハケンアニメ」とは、そのクールで作られたたくさんのアニメの中でもっとも成功したアニメに贈られる言葉で、ようするに覇権アニメのこと。アニメファンの間でよく使われている言葉なんだという。つまり本書は、アニメ業界を描く「お仕事小説」だ。

このジャンルには、辞書を作る編集者を描いた三浦しをん『舟を編む』、旅行会社の空港支所で働く人々のさまざまなドラマを描く新野剛志『あぽやん』、最近では山本幸久『芸者でGO!』など、傑作が数多い。この手の小説は、その職業ならではの特殊な事情や内幕などを物語の背景に置くので興味深いが、たとえば本書でもデート中だったアニメーターの和奈を、プロデューサーの行城が無理やり作画現場に連れてくるシーンがある。

そのときに、斎藤瞳監督を紹介されると、「あなただったんですね。あの子たちのおかあさん」。「お世話になってます。タカヤくんや、トワちゃんに。私は、リュウくん派だけど」と言ってから、和奈はこう言う。「じゃ、やります」。何気ないシーンだが、アニメ業界で働く人の空気を鮮やかに切り取っている。

★★★★

(文芸評論家 北上次郎)

[日本経済新聞夕刊2014年9月10日付]

★★★★★ これを読まなくては損をする
★★★★☆ 読みごたえたっぷり、お薦め
★★★☆☆ 読みごたえあり
★★☆☆☆ 価格の価値はあり
★☆☆☆☆ 話題作だが、ピンとこなかった

ハケンアニメ!

著者:辻村 深月
出版:マガジンハウス
価格:1,728円(税込み)

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