/

弾正星 花村萬月著

悪がはらむ爽快感と哀愁

(小学館・1700円 ※書籍の価格は税抜きで表記しています)

松永久秀といえば、三好長慶に仕えて権勢をふるい、主家を滅ぼして幕政を牛耳り、将軍足利義輝を暗殺、さらに、大仏殿を焼き払った3つの大罪を犯した男である。

これを花村萬月が描くとなれば、さぞや、凄(すさ)まじい描写の連続であろうと思いきや、今回の作品はちょっと趣きが違う。

冒頭、三好家の右筆になろうという久秀が"私"=丹野蘭十郎に、ことばの魔性を語るところからはじまる。久秀は気に喰(く)わぬ者の首を一瞬で刎(は)ね、女を犯し、権謀をふるうが、何故か、蘭十郎とは兄弟の契りを結ぶ。

一見、久秀が蘭十郎をリードしていくように見えるが、前述の三悪を犯していく過程でも、実は蘭十郎の方が久秀の心の中の慄(おのの)きや痛みを知りつくしており、両者の間に逆転現象が起こる。

加えて、久秀は蘭十郎の妻まさ音の両親を殺しており、いつ仇(かたき)を討たれてもいいと思っている。

悪の爽快感を描きつつも、それと表裏一体を成す哀(かな)しみを捉えて、一筋縄ではいかない作品を描いているのは、さすがは花村萬月だ。

ラストの何ともいえない哀感がこの一巻を見事にしめくくっている。

★★★★★

(文芸評論家 縄田一男)

[日本経済新聞夕刊2014年8月27日付]

★★★★★ これを読まなくては損をする
★★★★☆ 読みごたえたっぷり、お薦め
★★★☆☆ 読みごたえあり
★★☆☆☆ 価格の価値はあり
★☆☆☆☆ 話題作だが、ピンとこなかった

弾正星

著者:花村 萬月
出版:小学館
価格:1,836円(税込み)

すべての記事が読み放題
有料会員が初回1カ月無料

関連キーワード

セレクション

トレンドウオッチ

新着

注目

ビジネス

ライフスタイル

新着

注目

ビジネス

ライフスタイル

新着

注目

ビジネス

ライフスタイル

フォローする
有料会員の方のみご利用になれます。気になる連載・コラム・キーワードをフォローすると、「Myニュース」でまとめよみができます。
新規会員登録ログイン
記事を保存する
有料会員の方のみご利用になれます。保存した記事はスマホやタブレットでもご覧いただけます。
新規会員登録ログイン
Think! の投稿を読む
記事と併せて、エキスパート(専門家)のひとこと解説や分析を読むことができます。会員の方のみご利用になれます。
新規会員登録 (無料)ログイン