上方落語の戦後史 戸田学著 低迷からの復活 逸話山盛り

2014/8/21付
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(岩波書店・4600円 ※書籍の価格は税抜きで表記しています)

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笑福亭仁鶴は、関西の落語界をひきいる落語家のひとりである。だが、高校生のころは、大阪に落語という芸能のあることを、知らなかったらしい。それだけ、この世界はおちこんでいた。もりかえしだしたのは、ようやく一九五〇年代のおわりごろになってからであるという。

この本は、そんな関西の落語界が、一時の低迷をのりこえ隆盛をむかえるまでの歴史に、光をあてている。大阪のみならず京都、そして東京で復興のきざしをつかんでいく。そこへの目配りが、おもしろい。

東京の桂小文治や桂文楽、そして古今亭志ん朝らが、そのよみがえりに力をかしていた。作家の正岡容がそのために心をくだいていた様子も、よくわかる。のちに大看板となる桂米朝も、じつは正岡の薫陶を開花させていた。落語家としての技においてのみならず、芸能研究をきわめようとする志という点でも。

六代目笑福亭松鶴の、意外に学究的な一面をおしえてもらったことは、ありがたい。二代目桂春団治一座のポスターを、学生時代の手塚治虫がえがいていたことも、知らなかった。興味深い逸話が山盛りで、読み得の一冊。

★★★★

(風俗史家 井上章一)

[日本経済新聞夕刊2014年8月20日付]

★★★★★ これを読まなくては損をする
★★★★☆ 読みごたえたっぷり、お薦め
★★★☆☆ 読みごたえあり
★★☆☆☆ 価格の価値はあり
★☆☆☆☆ 話題作だが、ピンとこなかった

上方落語の戦後史

著者:戸田 学
出版:岩波書店
価格:4,968円(税込み)

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