2019年4月23日(火)

春秋

2014/8/16付
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見つけたとき、どれほど驚いたか。闇の怖さは薄れ、寒さを防いだ。人々の暮らしは一変し、団欒(だんらん)が生まれた。煮炊きすれば、生と違う香味がした。悪霊も退散すると信じた。大発見の衝撃が起源なのだろう。はるか古代ペルシャで山上神殿の火を拝む宗教が生まれた。

▼そのゾロアスター教が飛鳥時代、伝来していたという仮説がある。かつて、松本清張が小説「火の路」で示し議論を呼んだ。渡来人が伝えた教えが益田岩船など謎の多い遺跡と関連がある。そんな壮大なロマン、大胆な推理を裏付ける記録は見当たらない。祭儀の名残もないらしい。が、どこかに痕跡がないとも限らない。

▼今宵(こよい)、京都では五山の送り火がともる。大文字、鳥居などが夜空に浮かぶ。お盆で戻った精霊を松明(たいまつ)が再び冥府へと送り届ける伝統行事。平安、江戸時代など諸説あって起源は不明だ。拝火教では、火は魂を天上に蘇(よみがえ)らせると信じられた。闇を焦がす五山のかがり火は古代の神殿と似た役目を果たしているのかもしれない。

▼送り火は戦中、灯火管制で中止された。街灯も消え、夜道は暗かった。このころ、柳田国男は「火の昔」を書いて火の来歴、明かりのありがたさを説いている。もちろん、当時、国中に降り注いだ火の雨、いまも世界でくすぶる戦さの火は敬えない。山上から魂を導く火。静かに夜を照らす炎の色を深くこころに刻みたい。

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