2019年7月19日(金)

供給危機に備えた資源戦略を急げ

2014/8/13付
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電力は経済の血液だ。安く、安定して供給することが、日々の暮らしや企業活動に欠かせない。

だが、福島第1原子力発電所の事故以降、電気料金は高騰している。原発を代替する火力発電用の原油や液化天然ガス(LNG)の輸入が増えているためだ。エネルギーコストの増大に歯止めをかけ、国際情勢の変化の影響を受けにくい資源調達のあり方を考える時にきている。

高騰する電気料金

2013年度の発電燃料費は、震災前の10年度に比べ3兆6千億円増えた。電力会社7社が値上げし、このうち北海道電力は再値上げを申請した。家庭向けの電気料金は震災前と比べて約2割、企業向けは約3割上がっている。

電気料金の上昇は家計や企業活動を圧迫し、回復途上にある景気を冷え込ませかねない。関東商工会議所連合会が東京電力の営業区域にある約1千社を対象に実施した調査では、9割以上の企業が値上げ分を製品などの価格に転嫁できていない。

燃料費の増加分はすべて海外に流出する。貿易収支は震災前と比べて18兆円悪化し、赤字に転落した。最大の要因が原油やLNGなどの輸入額が増えたことだ。

電気料金の上昇が家計や企業をじわじわと締め付ける「慢性病」だとすれば、日本経済が突然まひするエネルギー危機の懸念も増している。

震災から4度目の夏を迎えても電力需給に余裕はない。電力会社は古い火力発電所をフル稼働させて供給力を確保している。しかし老朽発電所の運転中の予期せぬ停止は13年に全国で169件と、震災前に比べ7割増えた。需要ピークの今、トラブルが重なれば大停電の引き金になりかねない。

エネルギー自給率の低下も深刻だ。震災前に約2割だった日本の自給率は12年、原発停止と火力依存の高まりにより6%に下がった。経済協力開発機構(OECD)加盟34カ国中、33番目と最下位クラスだ。全輸入量に占める中東産原油の比率は8割を超え、1973年の第1次石油危機時を上回る。LNGも約3割が中東産だ。

中東ではイラクやシリア、リビアなど各地で混乱が続く。新たな資源調達先として期待されるロシアは、ウクライナ情勢をめぐり米欧と対立を深めている。国内の原油備蓄は半年分、LNGは2週間で底をつく。燃料を輸入に頼る火力発電への依存を高めるほど国際情勢の影響を受けやすくなる。

危機的な状況から抜け出る資源戦略を早急に考えなければならない。そのためには、安定供給と、いかに安く買うかの両方の視点が重要だ。特定のエネルギーに偏らず、調達先の選択肢を増やして売り手との交渉を有利に進める体制を整える必要がある。

米国やカナダ、アフリカなどからも原油やLNGを調達し、中東への依存度を下げる努力が欠かせない。日本周辺の海域に眠る国産資源の開発も進めたい。再生可能エネルギーを伸ばし、原発を着実に再稼働させて過度の火力依存を下げることも必要だろう。

アジア諸国と連携を

アジアとの連携も重要だ。日本が買うLNGは米欧に比べて割高だ。米欧では天然ガスの値段が市場で決まるが、日本向けのLNGは長期契約が中心で原油価格に連動して決まる。引き取り量や荷揚げ地にも厳しい制限がある。

アジア諸国が同じ問題に直面している。韓国や中国、インドなどと共同で購入したり、原油に連動しない独自の価格指標をつくったりして、割高な価格の原因であるアジア固有の取引慣行を変えていかねばならない。

JX日鉱日石開発と三菱重工業は米国で、石炭火力発電所から出る二酸化炭素(CO2)を集めて油田に送りこみ、油層の圧力を高めて原油生産を増やす事業を始める。CO2回収設備は世界最大の能力があり、減少傾向にある油田の生産量は20倍以上に回復する見通しだ。地球温暖化の原因となるCO2を減らし、原油生産を増やす一石二鳥の事業だ。

新しい油田の開発は深海や北極圏など、より難しい場所へ移り、開発コストは膨らんでいる。既存油田の回収率を高める意義は大きい。省エネや環境など、エネルギーの有効利用で先行する技術は日本に少なくない。これらを資源の安定確保につなげていきたい。

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