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春秋

湯上がりにビール、ビールとはやる心を抑えつつ冷蔵庫を開けて、無情にもそこに買い置きの缶がなかったときのショックはなかなか大きい。などと書くと昭和のお父さんそのものなのだが、なに、日本人のビール好きは明治のむかしからのDNAにほかならぬようだ。

▼田山花袋の「田舎教師」に、湯屋の座敷で昼から飲み始める場面がある。「校長は自分のになみなみと注いだ。泡が山をなして溢(こぼ)れかけるので、あわてて口をつけて吸った」というから飲んべえたちは100年前も同じ所作で気炎をあげていたのだ。ただしコップにブッカキ氷を入れてあおっているのは時代というものか。

▼そんな国民的飲み物も、近年はあまり元気がない。発泡酒なども含めたビール系飲料の昨年の出荷量は9年連続で過去最低を更新した。若者のアルコール離れや会社の宴席は敬遠という風潮に加え、例の「とりあえずビール」がすたれてきたせいもあろう。そういえば昨今の女子はスパークリングワインなんぞで乾杯する。

▼とはいえ日本はなお世界第7位のビール消費大国だが、ここにきてインドやタイの伸びが著しいそうだ。盛大な泡立ちと爽快感は、たしかに勢いのある国によく似合う。なにかにつけてうんと冷えた一杯が欠かせぬ昭和オヤジにもそういう意気あり――と言っておこうか。「矢の如くビヤガーデンへ昇降機」(後藤比奈夫)

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