冷静に考えたい佐世保事件

2014/8/2付
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こういうときこそ、社会の成熟度が問われるだろう。長崎県佐世保市で、高校1年の少女(16)が同級生を殺害した疑いで逮捕された。この事件をめぐる世間の反応には危うさがにじんでいる。

少女は今春から一人暮らしをしており、その部屋で同級生を殺害、遺体を切断するなどした。「ネコを解剖したり、医学書を読んだりしているうちに人間で試したいと思うようになった」などと供述しているという。

こうした状況が伝えられるなかで、社会には事件への猟奇的な関心やストレートな処罰感情が渦巻き、ネット空間などに少女や家族の実名や顔写真を含めたプライベートな情報があふれている。

これは憂うべき事態だ。たしかに事件は衝撃的で、多くの人が悲痛な思いにかられていよう。しかし、だからといって事件を臆測や先入観でとらえてはなるまい。心身状態の徹底した分析などを経なければ全容には迫れない。

少年法が実名報道を禁じる背景には、少年事件の解明にはそうした冷静な対応が必要だという社会的合意もある。短絡的なネット規制論議は排すべきだが、今回の事件でネットを経由して際どい情報が氾濫するありさまは、その精神を根本から揺るがすものだ。

少年法は、大きな事件が起きるたびに厳罰化が進められてきた。今回も同様の意見が出そうだが、拙速な判断は禁物だ。刑事罰の対象年齢を16歳以上から14歳以上に引き下げるなどの改正が再犯防止に効果をあげてきたかどうか、見方は分かれている。

厳罰化論議の背景には「少年犯罪は増え続け、凶悪化している」との誤解もある。実はこの10年間で、刑法に触れる犯罪で摘発された少年(14歳以上20歳未満)の数は6割減った。殺人などの凶悪犯罪に限っても半減している。

全体像を見ずに、まれに起きる特異な事案だけに注目すると全体の対策をゆがめることになる。この点でも、少年事件への視点には冷静さが欠かせない。

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