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都道府県は無理のない最低賃金の決定を

都道府県ごとの地域別最低賃金引き上げの目安を議論してきた中央最低賃金審議会は、今年度の時間あたりの上げ幅を、全国平均で16円とすることを決めた。昨年度の15円を上回る伸びとなり、答申通りに上がれば最低賃金は平均で時給780円となる。

消費を刺激して企業の生産活動を活発にし、それが新たな雇用を生むという好循環をつくるために賃金の上昇は重要だ。働けば少なくともこれだけはもらえるという最低賃金はパートなどの収入に影響し、引き上げはそうした非正規労働者の処遇改善にもつながる。

ただし企業の生産性の伸び以上に賃金を上げることになれば、企業の競争力を低下させ雇用や地域経済に悪影響を及ぼしかねない。実際の最低賃金の引き上げ額を決める各都道府県の地方最低賃金審議会は、地域の景気や企業収益の現状を精査し、それを踏まえて慎重に上げ幅を判断すべきだ。

引き上げ額の目安が今年度も大幅になった背景には経済指標の改善がある。2013年度、消費者物価指数は5年ぶりにプラスに転じた。現金給与総額も3年ぶりのプラスだった。

だが都市部に比べて景気回復のペースが遅い地域は少なくない。卸小売業などは再編の遅れから過当競争が続き、経営の苦しい中小企業が多いのが実情だ。

最低賃金で働く人の手取り収入が生活保護受給額を下回る逆転現象を解消し、勤労意欲をそがないようにするため、この数年は最低賃金を積極的に引き上げる傾向にあった。企業のコスト負担が重くなっていることも地域別最低賃金の改定では考慮すべきだろう。

重要なのは企業が無理なく継続的に賃金を上げていけるようにすることだ。働く人が新しい技能を身につけて、生産性を高めることができれば、賃金を上げやすくなる。政府はIT(情報技術)関連など成長性の高い分野を中心に職業訓練を充実させるべきだ。

企業が成長力を高められるよう、医療・介護や農業、環境・エネルギー分野などに参入しやすくする規制改革も急ぐ必要がある。

今年度の最低賃金引き上げで田村憲久厚生労働相からは、昨年度並みかそれ以上の上げ幅を期待する発言があった。賃金決定への政府の介入と受け取られかねない。民間が活動しやすい環境をつくって、持続的に賃金を上げられるようにすることが政府の役割だ。

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