2018年2月20日(火)

ビッグデータ活用で成長めざせ

2014/7/22付
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 膨大なデータを収集・分析し、それに基づいて需要を予測したり、隠れた消費者ニーズを探り当てたりする「ビッグデータ」の活用が注目されている。

 データの有効利用は企業の競争力向上に役立つだけでなく、交通事故の低減など社会問題解決のための武器にもなる。官民ともにビッグデータを扱う技量を磨くことで、国全体の生産性を高め、国民生活の向上をめざしたい。

競争力強化の決め手に

 ビッグデータの活用で期待される1つが、製品やサービスの価値向上だ。料理レシピサイトのクックパッドは、毎月のべ4000万人を超える利用者がどんなキーワードで検索したかを「たべみる」というデータベースにまとめ、食品メーカーや小売りチェーンに有償で提供している。

 利用する企業は、家で実際に料理をする人の関心を即座に把握でき、消費者目線に沿った新商品の開発や売り場構成が可能になる。クックパッドの担当者は「今年ブームになった新食材の『塩レモン』は昨年から検索がじわじわ増えていた。データの山の中にヒットの予兆が隠れている」という。

 工夫次第で、これまでIT(情報技術)とは縁遠かった分野にも恩恵が及ぶのもビッグデータの特徴だ。牛は発情すると、いつもより歩数が増加する。富士通はこんな事実に着目し、畜産農家向けの繁殖支援システムを開発した。

 それぞれの牛に歩数計を装着し、無線でデータを集め、種付けの機会を逃さないようにする。受精のタイミングをうまく調整することで、雄雌の産み分けも容易になり、畜産農家のメリットは大きい。北海道や九州のほか、韓国やオーストラリアなど海外でも利用が広がっているという。

 システムや機械の変調を予知して、先手を打つこともできる。IT利用の先進企業として有名な米ゼネラル・エレクトリック(GE)は、自社のジェットエンジンやタービンに多数のセンサーを取り付け、振動や温度などを細かく監視。異常の兆候があれば、部品交換などの措置をとる。トラブルを未然に防ぐことで、顧客満足度を引き上げる戦略だ。

 インフラやプラントの異常予知は日本でも始まっている。NECは発電プラント向けに、総合水道事業大手のメタウォーターは上下水道向けに、ビッグデータの活用を始めた。故障の芽を早めに摘むことで、設備の稼働率を高める狙いだ。

 ビッグデータは、より良い社会をつくるためにも威力を発揮する。東日本大震災の際は、ホンダやパイオニアなどが車のカーナビの位置情報をもとに、どの道が不通で、どの道が通れるかを示す「道路通行実績マップ」をつくって広く社会に公表した。この情報がとりわけ被災地支援で活躍したことは記憶に新しい。

 交通安全にも効く。埼玉県は車の走行情報を集めて、急ブレーキの多い「危険場所」を割り出した。そこに注意喚起の電光掲示板を置いたり、ドライバーの視界を妨げる木を伐採したりして、人身事故を2割低減したという。

 このほかビッグデータで電力の需要予測の精度が上がれば、夏場に需要が急増した時もそれに先回りして供給を増やせるので、予期せぬ停電のリスクを抑えられる。

プライバシーと両立を

 診療報酬明細書(レセプト)のデータを解析すれば、過剰な検査や投薬などを洗い出すことも可能になり、医療コストを削減しやすくなる。

 ビッグデータを活用するうえで、必ず出てくる課題が個人のプライバシーの保護だ。東日本旅客鉄道が昨年6月に電子乗車券「スイカ」の乗降情報を他社に提供しようとしたところ、利用者から反発の声が上がり、計画が頓挫した例もある。

 一方で悩ましいのは、個人情報の保護を強めすぎるとビジネスを制約し、技術の進化が止まりかねないことだ。ビッグデータの活用を成長戦略の一角に位置づける政府は、個人情報保護法の改正やプライバシー保護を担う第三者機関の設立に動きだしている。

 個人に関するデータとして保護されるべき情報と、個人を特定できないように加工すればビジネスなどに活用してもいい情報の線引きを明確にする必要がある。それにより、データを利用する企業や行政にとっても、データを提供する国民にとっても安心できる環境を整えてほしい。日本企業が世界でビジネスをしやすくするために、海外のプライバシー保護制度との調和も重要な課題である。

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