春秋

2014/7/21付
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この日だけ、自分たちのために運行時刻を変えて走らせてほしい。そう頼まれて、奈良の路線バス会社は面食らったに違いない。何百人という集団が移動するらしい。ならば貸し切りバスという手があるはずだが、依頼主の貴婦人は「それではお金がかかる」と粘った。

▼聞けば、アジアの留学生に日本の歴史と文化を理解してもらう研修会だという。それならばとバス会社は臨時便を出した。学生ひとりに毎月15万~20万円と、たっぷり奨学金を出す財団だから資金不足というわけではない。「熱さまシート」「あせワキパット」などで知られる小林製薬の創業家一族が運営する財団である。

▼「私ら関西人はケチやから、お金を出すなら口も出します」。財団を仕切る小林博子さんには夢がある。日本で学ぶ外国人だけでなく、先細る日本の伝統芸能も支援したい。若手の能楽師を養成する財団も立ち上げ、娘の井植由佳子さんが理事長に就いた。稽古の道具を支給したり合宿を開いたりと、アイデアは尽きない。

▼奨学金を受けるのは、反日感情が渦巻く中国の留学生が多い。日本の価値観に触れてもらおうと、小林家の夫人らの案で座禅や礼儀作法の習得を義務づけた。国内の養成会には能楽師の子弟だけでなく一般の中学生も集まった。動きにくい政治や古典芸能の世界を変えるのは、こんな「おもろい女性」の発想かもしれない。

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