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月の部屋で会いましょう レイ・ヴクサヴィッチ著

深くて奇妙 引き込まれる33編

1960年代の青春時代に「三十年後に会いたいね」とささやきながらも別れた彼女が、北アフリカで死亡した、と風の便りに聞く主人公。だが30年後、死んだはずだった女から電話があり、会いたいと言われる。

ぐっと引き込まれるような表題作だ。死んだはずなのになぜ?と不思議な気分に包まれつつ、懐かしい思い出が蘇(よみがえ)ってくる。さて貴方(あなた)だったら、どうするだろう。無視するか、それとも、恐る恐る出かけてみるか?

身体もゆるんだ中年男になっても、未(いま)だシャイな純情を隠しもつ。そんな男の迷いと憧れが温かく抒情(じょじょう)的に描かれている。

短い頁(ページ)数なのに驚くほど豊かな世界が広がる33編。どれも深くて、奇妙な持ち味がたまらない。

評者のお気に入りは、ロシアの民話に登場する人食い魔女と、アリゾナのメキシコ系原住民の世界観がミックスされた「最終果実」。

大木を頭に生やして暴れる怪物女の攻撃を必死でかわし、なだめすかしながら、自分の豚を餌にする男の奮闘ぶりが、ユーモラスに描かれる。男の悲哀が却(かえ)って可愛(かわい)らしさを伝えている。心憎い演出だ。岸本佐知子、市田泉訳。

★★★★

(ファンタジー評論家 小谷真理)

[日本経済新聞夕刊2014年7月16日付]

★★★★★ これを読まなくては損をする
★★★★☆ 読みごたえたっぷり、お薦め
★★★☆☆ 読みごたえあり
★★☆☆☆ 価格の価値はあり
★☆☆☆☆ 話題作だが、ピンとこなかった

月の部屋で会いましょう (創元海外SF叢書)

著者:レイ・ヴクサヴィッチ
出版:東京創元社
価格:2,052円(税込み)

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