ツール・ド・フランス100話 ムスタファ・ケスス、クレマン・ラコンブ著 過酷な競走、喜怒哀楽が凝縮

2014/7/18付
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(白水社文庫クセジュ・1200円 ※書籍の価格は税抜きで表記しています)

(白水社文庫クセジュ・1200円 ※書籍の価格は税抜きで表記しています)

また「ゆっくりとした深呼吸とともに、フランスの夏が始まる」。現在開催中の自転車耐久レース、ツール・ド・フランスをめぐる逸話集。一線の新聞人たる共著者の筆力は、愛され嫌われ、純で不純な人間そのものを描いて過不足がない。

とある子犬が元気をなくしたところに端を発する創成秘話から記憶に新しいランス・アームストロングのドーピング禍まで。史実そのものも興味深いが、なにより文章が軽妙で端正なのが心地よい。「外科医の精密さ」「峠の調教師」「パン屋の長男」「ふくらはぎを黒こげにする太陽」。詩のような言葉がちりばめられ、野心ぶつかる過酷で露骨な競走は寓話(ぐうわ)的なふくらみを得た。

自転車ファンのみならず、スポーツを読み、あるいは書く者に真価を示す一冊。空間と時間を限られる競技大会という「枠」があるから喜怒哀楽はそこに凝縮され、普遍へ昇華する。

1913年、元錠前屋の選手は部品が故障すると14km先の鍛冶屋に飛び込み、4時間かけて自分で直す。短い描写に青年の意気地と自由な精神がたちのぼり忘れがたい。翻訳の日本語は隅々まで美しい。斎藤かぐみ訳。

★★★★★

(スポーツライター 藤島大)

[日本経済新聞夕刊2014年7月16日付]

★★★★★ これを読まなくては損をする
★★★★☆ 読みごたえたっぷり、お薦め
★★★☆☆ 読みごたえあり
★★☆☆☆ 価格の価値はあり
★☆☆☆☆ 話題作だが、ピンとこなかった

ツール・ド・フランス100話 (文庫クセジュ991)

著者:ムスタファ ケスス:クレマン ラコンブ
出版:白水社
価格:1,296円(税込み)

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