人口減少に備え国土の未来像の議論を
人口が減少するなかで2050年の国土の姿はどう変わり、各地域の活力を維持するためには何が必要なのか。国土交通省の有識者会議が「国土のグランドデザイン2050」をまとめた。今後の国土構造のあり方を巡る議論のたたき台にしたい。
現在の人口動向をもとに同会議が描いた国土の将来像は厳しい。50年には日本の人口は1億人を下回り、地方にある人口30万人以上の都市圏の数は現在の61から43に減る。全国の居住地域の2割では暮らす人がいなくなる。
30万人という人口は、百貨店や映画館のような集客施設や大学などが立地する目安になる人口規模だ。こうした機能を失った地域は人口の流出がさらに進むだろう。
同会議は対策として「コンパクトとネットワーク」による国土の再構築を提言した。商業や医療など生活に必要な機能を一定の地域内に集約すると同時に、人口10万人以上の複数の都市を高速道路などで結んで30万人規模の「高次地方都市連合」をつくる案だ。
まずは全国で子育てをしやすい環境を整えることが大事だが、それでも人口減少は当面続く。国土構造の再編は一朝一夕でできる話ではない。今から将来を見据えて地方の衰退を防ぐ手立てを考えることは極めて重要だ。
東京圏も今後、大きな問題に直面する。地方では65歳以上の高齢者数は25年にピークを超すが、東京圏では40年に1千万人を突破し、その後も増える。介護施設の不足が深刻になるのは明らかだ。
同会議は大都市に暮らすシニア世代などの地方への移住を提案している。個人の人生に関わる問題だから簡単ではないが、希望者に対して住まいや働き口をあっせんするなど、国と自治体が連携して取り組めることはあるだろう。
同会議の提言のなかには気がかりな点もある。東京一極集中からの脱却を掲げ、「国や民間の施設・機能の地方への移転促進」を盛り込んでいる。人口減に歯止めをかけるためには、出生率が低い東京に全国から人が集まることは確かに望ましくない面はある。
しかし、受け皿の整備を名目に地方への公共事業のバラマキになっては困る。提言では日本海国土軸、太平洋新国土軸などといった大規模プロジェクトに言及しているだけになおさらだ。どのような公共投資を優先すべきか、議論をさらに深める必要がある。