2019年3月26日(火)

春秋

2014/7/8付
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夜空に散る花火のような、あの映像が記憶に焼きついている。小惑星探査機「はやぶさ」が、宇宙の長旅を終えて地球に帰還したのは4年前だった。落下したのはオーストラリアの砂漠地帯。先住民アボリジニの聖地だった。回収作業には部族の長老もヘリで同行した。

▼あのとき、霊的な何かを感じた日本人は少なくなかろう。大自然と精霊に囲まれて生きた先人の子孫たちは、燃え尽きる「はやぶさ」の姿をどんな気持ちで眺めていたことか。長老は聖地に被害が出なかったことを確認し、日本の科学技術の力を祝福してくれたという。どこか不思議な縁を思わせる、心温まる逸話である。

▼エネルギーや鉱物資源、広い空間……。豪州には、日本に足りないものがそろっている。日本ハムが東部で営むワイアラ牧場は、山手線の内側と同じほどの面積がある。飛行機から見下ろすと、黒山がうごめく光景が広がるが、その正体は約5万頭の黒い牛の群れだ。規模で競っても、日本の畜産農家がかなうはずもない。

▼安倍晋三首相はきょう、日本の首相として初めて豪州議会で演説する。競い合うだけではなく、お互いの違いと長所を認め、補い合い、助け合う友人として、日本を印象づけられるだろうか。「人が歩けば足跡が残るように、人が旅した土地にはエネルギーと魂の跡が宿る」。アボリジニの神話が現代に伝える教えである。

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