まだ残るSTAP論文の疑惑 - 日本経済新聞
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まだ残るSTAP論文の疑惑

STAP細胞の論文疑惑をめぐる問題で、理化学研究所の小保方晴子ユニットリーダーが参加する検証実験が近く始まる。理研から独立した第三者の立ち会いのもと、小保方氏自身の手でSTAP細胞をつくれるか調べるという。

しかし検証実験の前にすべきことが、理研にはある。論文に関し新たに出てきた疑惑の解明だ。小保方氏らは英科学誌ネイチャーに載せた論文を撤回したが、これを問題の幕引きにしてはならない。提起されたすべての疑惑を解明して小保方氏や上司の責任を明確にし、必要な処分を下すべきだ。

理研の調査委員会は5月、小保方氏らの論文に画像の切り貼りなど不正があったと認定した。小保方氏は改ざんの意図はなく「過失」だったと不服を申し立てた。

ところがその後、調査委が認定した不正以外に、重大な疑惑が複数浮上し未解明のままだ。

そのひとつが論文共著者の若山照彦・山梨大学教授の指摘だ。

小保方氏は若山氏から受け取ったマウスの臓器からSTAP細胞を作製、同氏に渡し、どんな臓器の細胞にもなる「万能性」の確認をゆだねていた。問題の発覚後、若山氏が手元に残る細胞の遺伝子をよく調べたところ、小保方氏に提供したマウスからつくられた細胞とは異なることがわかった。論文の主張と矛盾する。

若山氏は受け取った細胞が実はSTAP細胞ではなく、もともと万能性を備えたES細胞(胚性幹細胞)だったとみている。そうであればSTAP細胞が本当に作製されていたのかが疑わしくなる。この問題はネイチャー誌の論文撤回の理由にも挙げられている。

小保方氏が参加する検証実験はSTAP細胞の有無に関心を寄せる声にこたえる効果があるかもしれない。しかし科学的な意義は小さい。だれでもSTAP細胞を作製できることが大事で、疑惑の当事者がつくったのでは存在証明になるのか疑問だ。

論文に関する疑惑の徹底解明こそが、理研の信頼回復の道だ。

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