2018年10月22日(月)

春秋

2014/6/30付
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「織田選手一等に入賞し 初めて大マストに日章旗翻る」。1928年8月3日の中外商業新報(本紙の前身)にこんな大見出しの記事がある。アムステルダムで開かれていた五輪で、日本人として史上初の金メダルを三段跳びの織田幹雄選手が獲得したときの報道だ。

▼喜びをいきいきと伝える紙面だが、見出しが何だかもどかしい。いまなら「織田 日本人初の金」だろう。しかし当時は優勝を「金」と表現する感覚は乏しかったようだ。金銀銅の、メダル自体への意識が膨らむのは戦後だ。五輪といえばメダルが頭に浮かび、われらが「金」の数にばかり思いを募らせてきた歳月である。

▼6年後の東京五輪では過去最多の16個を大きく上回る25~30個の金メダルをめざすと、文部科学白書がうたっている。意気込みは結構だが相変わらずの「金」信仰に鼻白む人も少なくはなかろう。中国やロシアのような国威発揚型ではなく、成熟国家ならではの穏やかで多様性を重んじる五輪がこれで構想できるかどうか。

▼日本人が活躍しそうな場面は大騒ぎ、あとは野となれ……というアンバランスもそろそろ改めていい。もっとおおらかに、もっと視野を広げてスポーツを見るなら新・東京五輪もうんと価値を増すはずだ。大昔の紙面を眺めれば「日の丸揚がる」というだけで金銀銅のどれだかわからぬ見出しもある。案外それも悪くない。

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