スノーデンファイル ルーク・ハーディング著 米当局による情報収集の実態暴く

2014/6/23付
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現在、世界で最も注目を集める人物の一人が、エドワード・スノーデン氏であることは疑いの余地がないだろう。なぜ氏が話題になったかといえば、米国の情報機関、国家安全保障局(NSA)の秘密活動を暴露したためである。ではこのNSAの秘密活動とは何か。それは同組織がサイバースペースにおける個人情報を膨大に収集、蓄積していたことである。

(三木俊哉訳、日経BP社・1800円 ※書籍の価格は税抜きで表記しています)

(三木俊哉訳、日経BP社・1800円 ※書籍の価格は税抜きで表記しています)

米国では法律によって、市民に対する政府の調査活動を禁じているが、本書によるとNSAは名だたるIT企業の協力を得ながら、米国のみならず、世界中の個人情報を無差別に収集してきた。NSAが傍受するメールや通信情報は、何と月に970億件にも上るという。

NSAがこれほどの情報活動を始めたのは、2001年の同時多発テロによるところが大きい。米国政府はテロとの戦いを標榜したため、NSAの情報収集能力に大きな期待がかけられたのだが、いつの間にかNSAは暴走してしまった。米国では情報機関の暴走を防ぐ安全弁として、議会委員会による監視制度があるが、巨大になり過ぎた組織は委員会のメンバーをも抱き込み、時には無視したため、監視はほとんど機能しなかったという。

そこで最後の砦(とりで)となったのが報道機関である。英国の「ガーディアン」紙やジャーナリスト、グリーンウォルド氏らが、スノーデン氏の極秘文書を精査し、それを記事にすることに努めた。時には政府機関が編集部に立ち入り、パソコンを破壊するという焚書(ふんしょ)行為まで行ったそうだが、報道機関が踏ん張った結果、報道の自由は守られ、NSAの実態を暴露した本書が世に送り出されたのである。

ただしNSAの存在を全否定することはできないし、スノーデン氏のやり方も違法であることは指摘しておかなくてはならない。政府の情報収集活動のお陰(かげ)で、未然に防げたテロや犯罪行為もあり、米国民の一定数は政府の情報活動に理解を示している。情報機関の活動と市民のプライバシーの問題は常に天秤(てんびん)にかけて勘案されるべきであり、議会や報道機関がそれをチェックできるような制度設計こそが重要なのである。

本書で描かれるNSAの実態には驚かされるが、ちょうど時を同じくして、グリーンウォルド氏による『暴露』(新潮社)も発売された。こちらは極秘資料の解説が中心に据えられており、また興味深い。

(防衛研究所主任研究官 小谷 賢)

[日本経済新聞朝刊2014年6月22日付]

スノーデンファイル 地球上で最も追われている男の真実

著者:ルーク・ハーディング Luke Harding
出版:日経BP社
価格:1,944円(税込み)

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