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年金の安定へ即座に改革着手を(社説)

少子高齢化の中、厚生年金国民年金は将来どうなるのか。厚生労働省はこのほど、おおむね100年先までの公的年金の財政状況を検証し、結果を発表した。

それを見ると「今のままでは安心できない」と言わざるを得ない。ある程度意味のある年金を支給し続けるには、制度の改革が欠かせない。改革は国民や企業の痛みを伴うが、放置していては将来世代へのしわ寄せがひどくなるばかり。早急に着手すべきだ。

楽観できない検証結果

公的年金は人口構成や経済環境に大きな影響を受けるが、それらは時代とともに変化する。そこで厚労省は5年ごとに、人口や経済の新たな前提を置いて将来を検証している。今回は経済について、中長期的に高成長が続くケースからマイナス成長となるケースまで、8通りの前提で試算した。

公的年金の支給水準は、モデル年金額が現役男性会社員の平均手取り収入に対してどの程度あるかという割合で示す。これを「所得代替率」という。モデル年金とは、平均収入で40年会社に勤めた夫と専業主婦の妻からなる世帯がもらう額をいう。

現時点での所得代替率は62.7%。検証結果によると、8通りの経済前提のうちの中間で標準的とみられるケースの場合、所得代替率は約30年かけて50.6%にまで下がって安定する。年金は約2割の目減りだ。

政府は所得代替率50%以上の維持を目標としているから、このシナリオなら目的を達することになる。しかし、ひと安心とはいかない。前提が楽観的なのだ。

今後10年で日本経済は急速に回復し、中長期的に物価は毎年1.2%、賃金は2.5%伸びるとする。年金積立金の運用利回りの見通しも5年前の検証の標準ケースよりわずかだが引き上げている。女性や高齢者の労働参加も大幅に増えると仮定する。

後で「あの通りにはいきませんでした」では信頼を損なう。より堅実な前提に重きを置くべきだとわたしたちは主張してきた。

女性らの労働参加も進まず中長期的にマイナス成長が続く最悪ケースでは、40年後の所得代替率は39%にまで下がりかねない。年金は今より4割ほど目減りすることになる。アベノミクスが功を奏すことを期待したくもなるが、厳しい未来も視野に入れ、改革を実施していく必要がある。

公的年金は2004年、現役世代の負担ばかりが増えるという批判を踏まえて、保険料に上限を設け、その範囲内で年金を支給する制度に変更した。厚生年金の場合で給料にかかる保険料率は現在約17%だが、3年後には18.3%まで上がって固定される。

ただ、そのときに導入した「マクロ経済スライド」はまだ一度も発動されていない。年金水準を毎年小刻みに下げる仕組みだが、デフレ経済下では機能しにくい立て付けになっているためだ。

制度を見直し、即座に着実に実施していくべきだ。早いうちに年金の水準を切り詰めておけば、将来の水準低下をある程度抑えることができる。

年金制度の支え手を増やすことは、年金財政健全化に役立ち支給水準も上げる。

支え手を増やそう

女性を中心とするパート労働者の厚生年金加入を進め、保険料を負担してもらうようにしていきたい。現在、パートの中には夫に扶養される立場として、保険料を負担していない人も多い。

現在は原則65歳である年金の受給開始年齢を引き上げることも、検討に値する。この場合、高齢者が働きやすい環境を整えていくことが必要だ。

年金財政が厳しいと公的年金積立金の運用に期待したくなる。だが、高い利回りを前提に制度を考えるべきではない。運用の目的は将来の年金受給者のため長期的に年金資産の価値を高めることだ。運用力の強化は進めるべきだが、目先の利回りを最優先するような運用体制にしてはならない。

年金制度に関連した様々な制度改革も進めたい。現役世代に比べ優遇されている高齢者に対する税制は見直し、世代間格差の是正につなげてほしい。収入や資産が多い高齢者には相応の負担を求め、世代間だけでなく世代内の助け合いも強化していくべきだ。

女性や高齢者の社会参加を進めて担い手を増やすだけでなく、将来の担い手である子供の数も増やしたい。夫婦共働きでも子育てがしやすい社会をつくるなど、年金の安定に向けて社会全体を変えていく必要もある。

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