春秋

2014/5/29付
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忌まわしいあの言葉を、また聞かされることになった。「人を殺そうと思った」「誰でもよかった」である。アイドルグループ、AKB48のメンバーに切りつけ逮捕された男が、調べにこう話しているという。過去にも同様の事件で、犯人らが口にしてきた言いぐさだ。

▼不敵な犯罪者気取り、という心情なのかどうかは知らない。だが、どううそぶこうとも、卑劣な性根に変わりはない。こうした手合いは、多くの場合、力の強い大人の男性を襲ったりはしないものだ。「誰でもよかった」という相手は子どもや女性、お年寄りである。あざとい計算を働かせ、自分より弱い者を狙っている。

▼幸い、襲われたメンバーの傷は快方に向かっているそうだ。それでも不快な思いが一向に消えないのは、弱者を無差別に狙うこうした犯行が、時として次の犯行を誘発するおそれがあるからだ。AKBの事件のすぐ後にも、金沢市で開かれていた小学校の運動会に刃物を持った男が侵入して、児童を追い回す事件が起きた。

▼「他人のすることが、なんでもかんでも気に入らない人が世の中にはいる。自分の気に入らないことを見つけると、まずそれをぶっこわしておいてから理由をでっちあげる」。作家の宮部みゆきさんの「火車」のなかに、こんな一文があった。定型のような妄言に惑わされず、悪意に負けない社会づくりに知恵を絞りたい。

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