春秋

2014/5/22付
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新緑がすがすがしい。初夏の風がさわさわと若葉を揺らす。詩人王維が浅緑の輝きを歌っている。「渭城(いじょう)の朝雨軽塵(けいじん)を●(さんずいに邑、うるお)す 客舎(かくしゃ)青青(せいせい)として柳色(りゅうしょく)新たなり」(雨が洗った柳の柔らかな新芽が目にしみる)。この季節、辺境に旅立つ友人を見送る情景を描いた七言絶句だ。

▼詩人は阿倍仲麻呂に送別の詩を贈ったことでも知られる。奈良時代、仲麻呂は10代で唐に留学し科挙に合格、玄宗皇帝に仕えた。高官となり、なかなか帰国できない。50歳を過ぎてようやく許された。送別の宴には多くの詩人が姿を見せた。出発に際して詠んだ望郷歌が百人一首「天の原ふりさけ見れば」の歌といわれる。

▼祖国の土は踏めなかった。帰りの船が暴風雨に遭う。唐統治下の安南(現在のベトナム)に漂着し、帰国を断念する。安南の総督を務めたのち73歳で長安に没した。船が漂ったであろう南シナ海。その島々の領有権をめぐる中国とベトナムなどの対立が激化している。石油などの海洋資源がからむだけに、双方が譲らない。

▼唐は軍事力で広大な領域を治めた大帝国だった。重要な商業拠点である安南が奪われると軍を動かし奪還している。経済権益の争奪戦はいまも激しいが、武力でのごり押しは国際社会が許さない。そういえば習近平主席は「中華民族の偉大な復興」を目標に掲げていた。千年を経ても帝国気質は容易には変わらないらしい。

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