蔦屋 谷津矢車著 燃えさかる反骨のほむら

2014/5/15付
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(学研パブリッシング・1300円 ※書籍の価格は税抜きで表記しています)

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デビュー作『洛中洛外画狂伝』を読んだ時もそうだったが、これが弱冠27歳の書き手の作品であると誰が信じ得ようか。重箱の隅をつつけば小さな文句はあげられよう。が、いよいよ廃業となった地本問屋豊仙堂・丸屋小兵衛の前に、逆光を背に蔦屋重三郎が現れる発端から、その面白さは半端ではない。吉原者の出版プロデューサー、重三郎は、小兵衛と組んで無名だった喜多川歌麿を売り出し、さらには大田南畝、山東京伝らを総動員し、遂(つい)には謎の絵師・写楽を発掘する。

幻想と現実のあわいに存在する〈吉原〉という虚で江戸という実の世界を染めあげよう、という企ては、正しく、江戸をひっくり返した大騒ぎになっていく。が、後半、松平定信の寛政の改革がはじまると……。この若き作者の主張は、出版という文化は社会を変革し得る、或(ある)いは、言論弾圧がいつ起こってもおかしくない私たちのいま、それは、あらゆる権力からアンタッチャブルでなければならない。

恋川春町自害以降の作者の燃えさかる反骨のほむらに私は何度涙したことか。余韻しみいるラストまで、本書は今年最大の問題作といえよう。

★★★★★

(文芸評論家 縄田一男)

[日本経済新聞夕刊2014年5月14日付]

★★★★★ これを読まなくては損をする
★★★★☆ 読みごたえたっぷり、お薦め
★★★☆☆ 読みごたえあり
★★☆☆☆ 価格の価値はあり
★☆☆☆☆ 話題作だが、ピンとこなかった

蔦屋

著者:谷津矢車
出版:学研マーケティング
価格:1,404円(税込み)

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