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人間は料理をする(上・下) マイケル・ポーラン著

世界中で修業し歴史掘り起こす

料理の発明によって、人間は進化を遂げた。料理によって食材は消化しやすくなり、多くの栄養価を取り入れることができるようになった。そして、大量の食料を延々と探し回ったり、咀嚼(そしゃく)したりするために使っていた「時間とエネルギーをほかの目的に使えるようになり、その結果、文化が生まれた」のだ。

本書は、食などの分野で有名なジャーナリスト、マイケル・ポーランが自らさまざまな料理を学ぶために、世界中を駆け回って修業する物語である。とはいえ、単なる彼の冒険譚(たん)でもない。大量の文献をもとにし、料理の歴史・経済・科学など多彩な要素が詰め込まれた味わい深い物語なのである。

著者は、料理を斬新にも古代の四大元素である火・水・空気・土に分けた。火の項目ではバーベキュー、水では鍋を使った煮込み料理、空気では「八〇%の風味のある空気」を含んだパン、土では微生物の恩恵を受けて作られる発酵食品を扱っている。

まず、バーベキューの話から驚いた。野外で網の上で肉を焼くイベントではない。米国南部の本来のバーベキューは、かまどのような容器に入れ、豚一頭を丸ごと数時間もかけて蒸し焼きにする料理だったのだ。料理の起源も火にある。生贄(いけにえ)の動物を丸焼きにし、その煙を神に捧(ささ)げる儀式は多くの文化で実施されていたらしい。その焼いた肉を人間が食す。この宗教的な儀式がバーベキューの起源なのである。

水を使う料理は、火を使う料理からかなり遅れて登場する。火に耐えられる陶器を必要としたからだ。水を料理に使うことによって、基本的には生では食べにくかった野菜や、焼いて食べるには適さなかった部位の肉も食べられるようになった。水のおかげで、料理は多様になった。

本書を通じて、料理は人を繋(つな)げる力があることがわかった。空気の項では人気パン職人のレシピ本が出版されると、それを再現しようとする人たちが集まり、インターネット上で写真や意見が投稿され、互いに成功に向け協力し合う。かつて、動物の丸焼きが宗教的儀式であり、人を結びつけた。そして、その儀式を起源とするバーベキューも、仲間と集い楽しむ行事である。

家庭も同じだ。著者は男女子ども関係なく、キッチンに立って料理をしようと呼びかける。今や調理済み食品はどこでも入手でき、家庭料理もオプションになった。家庭料理も、退屈な仕事かレジャーと見なすかは私たち次第だろう。

(サイエンスライター 内田 麻理香)

[日本経済新聞朝刊2014年5月4日付]

人間は料理をする・上: 火と水

著者:マイケル・ポーラン
出版:エヌティティ出版
価格:2,808円(税込み)

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