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春秋

80年近くも前のことだ。経済学者のケインズは、偉大な自然科学者ニュートンの遺稿が詰まったトランクをオークションで落札した。ケインズにとってニュートンは母国の誇りであり、母校ケンブリッジ大学の大先輩でもあった。その遺稿の散逸を防ごうとしたようだ。

▼手に入れたトランクを開けて中身に目を通したケインズは、少なからず驚いたらしい。予想していたのとは違っていたからだ。万有引力の発見、運動方程式や微積分の発明、光のスペクトル分析……。ニュートンの科学的な業績はとてつもない。ところが遺稿の大半を占めていたのは、怪しげな錬金術に関する文書だった。

▼ケインズのニュートン評は面白い。後世の人々が考えているような「近代に属する最初の科学者」ではなく、むしろ「最後の魔術師」だったというのだ。実際、後にニュートンの遺髪を分析したところ、通常の40倍以上の水銀が含まれていた。いうまでもなく水銀は、錬金術の世界で最もよく用いられた物質の一つである。

▼今の科学者の仕事の現場は、ニュートンの時代に比べると様変わりした。厳密な手順に沿った実験を踏まえてデータを整え、論文を書き上げなくてはならない。iPS細胞でノーベル賞を受賞した山中伸弥京都大教授が以前に発表した論文をめぐって反省の意を表明したのは、科学の水準が高くなった証しともいえようか。

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