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警戒怠れぬ中国の司法リスク

中国の上海海事法院(裁判所)は、戦前の契約に由来する損害賠償などを商船三井が支払っていないとして、同社の大型鉄鉱石運搬船を差し押さえたと発表した。

紛争の当事者が話し合っている段階での強制執行で、唐突感は否めない。中国ビジネスを進めるうえで司法がからむリスクも小さくないことが浮き彫りになった。

中国の報道などによると、日中戦争が始まる前年の1936年、中国の会社が商船三井の前身である日本の海運会社に船舶2隻を貸し出した。これを旧日本海軍が徴用し、最後は沈没した。

中国の会社の経営者の遺族は1988年に、未払いの賃貸料や船舶を失ったことによる損害への賠償を求め、中国の裁判所に提訴した。2010年には、約29億円の支払いを商船三井に求める判決が確定した。

同社はその後、賠償の支払いについて原告側と話し合いを進めてきた。上海海事法院は、話し合いは決裂したとして強制執行を求める原告の2度目の訴えが昨年末にあった、としている。

中国では今年、日中戦争時の強制連行被害者らによる対日賠償請求訴訟を裁判所が初めて受理した。習近平国家主席ひきいる指導部は司法の面でも対日攻勢を強めているわけだ。今回の強制執行もその一環とする見方が出ている。

中国の一党独裁体制の下では政治が司法を左右する。日中の政治関係が悪い現状では、中国ビジネスを進める日本企業は司法リスクへの警戒を怠れない。

もっとも今回の強制執行には、戦争賠償を求める動きの一環だと決めつけられない面がある。習指導部の対日攻勢や中国の司法リスクは要注意だが、思惑を見極めて慎重に対処すべきだろう。

一方の中国側は、不透明な司法の動きが日本企業の対中ビジネスを一段と萎縮させかねないことを、理解する必要がある。今年1~3月の日本から中国への直接投資は、前年同期に比べ4割以上も落ち込んでいる。

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