/

山田工業所、ハンマーで作る中華鍋(神奈川のエンジン)

中華料理の味を支える中華鍋。名店が軒を並べる横浜中華街の8割以上の店舗で使われているのが山田工業所(横浜市)の中華鍋だ。大量生産とは一線を画し、鉄をハンマーで打ちつける「打ち出し」で鍋を形作る。業務用鍋にとどまらず、家庭向けの鍋の開発や販促面で学生との連携にも取り組むなど、新たな挑戦も始めている。

ドン、ドン、ドンと、工場には鉄板をハンマーで打つ機械の規則正しい音が響く。台に載った薄い鉄板を上からハンマーで何万回も打ちつけると、丸底の中華鍋の輪郭になってくる。1日で生産できる量は、自社開発した機械をフル稼働させても約300個が限界。できあがった中華鍋の底には、打ち目が独特の模様となって浮かび上がる。

金型に鉄をはめ、プレス加工して鍋を大量生産する方法が主流となるなか、打ち出しがプロの料理人から支持されるのは「熱の吸収が良くて丈夫」(山田豊明社長)だからだ。プレス加工では鉄板を伸ばすため、鉄の組織が離れがちになる。一方、打ち出しでは組織がつぶれて重なるので、密度が高くなり熱伝導に優れているという。使い古して穴が開くことも少ない。プレス加工で作ったものより、重さも1割ほど軽いという。

1957年の創業以来、打ち出しに一貫してこだわる。戦後の鉄が不足していた時代、飲食店に勤めていた山田社長の父親が自ら鍋を作り始めたのが会社の原点。当初は土間にドラム缶の鉄板を置き、手動でハンマーを打ちつけて湾曲を作っていた。70年代からハンマーで鉄板を自動で打つ機械を開発した。

中華料理店御用達の鍋は一般家庭でも話題となり、10年程前からは家庭用の中華鍋やフライパンの製造も始めた。百貨店や通販雑誌などで取り扱っている。持ち手側の深さが浅く、振って料理がしやすい返しフライパンのほか、取っ手がチタン製で調理中に熱くなりにくいフライパンなどを作った。

横浜美術大学の学生と組み、一般向けの商品のマーケティングにも挑戦している。2013年にアウトドアや災害時に使える調理窯を開発。卓上コンロの上で、煮る、焼くなど場所を選ばず調理ができるのが特徴。学生に提案されたキャラクターは窯をモチーフとした丸くかわいらしい風貌で、「どこでも調理できる」という特徴をアピールするため足がついている。「会社の中ではまず出てこないアイデアが出てきた」と話す。

鍋作りを軸としながら、「失われつつある職人の技術を残していきたい」と、じゅうたん作り専用のミシンやしゃもじなどの開発にも意欲的。昔ながらの製法への思いを原動力に、枠にとどまらない挑戦を続ける。

初割ですべての記事が読み放題
今なら2カ月無料!

セレクション

トレンドウオッチ

新着

注目

ビジネス

ライフスタイル

新着

注目

ビジネス

ライフスタイル

新着

注目

ビジネス

ライフスタイル

フォローする
有料会員の方のみご利用になれます。気になる連載・コラム・キーワードをフォローすると、「Myニュース」でまとめよみができます。
新規会員登録ログイン
記事を保存する
有料会員の方のみご利用になれます。保存した記事はスマホやタブレットでもご覧いただけます。
新規会員登録ログイン
Think! の投稿を読む
記事と併せて、エキスパート(専門家)のひとこと解説や分析を読むことができます。会員の方のみご利用になれます。
新規会員登録 (無料)ログイン
図表を保存する
有料会員の方のみご利用になれます。保存した図表はスマホやタブレットでもご覧いただけます。
新規会員登録ログイン