2018年7月22日(日)

環境に優しい温泉発電・長野県高山村(信越巡って発見)

2014/4/20付
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 高山温泉郷として多くの温泉愛好家が訪れる長野県高山村で、温泉のお湯を発電に生かす取り組みが始まった。長野県内の温泉数は全国で2番目に多い温泉県だ。再生可能エネルギーのなかで、温泉は地熱発電に比べ周辺環境への負荷が相対的に小さいとみられる。県内の各地で導入が広がる可能性がある。

温泉のお湯を使って発電する

 長野市の中心部から車で1時間ほど。高山村と山ノ内町にかかる笠ケ岳の麓にある七味温泉は、硫黄のような温泉の香りが漂う。かつて泉質が違う7種類の温泉を1つの湯釜に混ぜたことがその名の由来で、今でも年間10万人の日帰り客が訪れる。

 温泉の横を流れる渓流のそばにある大型の機械が、七味温泉ホテル(高山村)が設置した県内初のバイナリー発電施設だ。

 バイナリーとは英語で2つの、という意味だ。まず、沸点がセ氏15.3度の気化しやすい特殊な液体を、地中からわき出す七味温泉のお湯で沸騰させ、蒸気の力でタービンを回して発電する。蒸気は近隣の川などの水で冷やされ、もとの気化しやすい液体に戻る。それを再利用し、温泉のお湯で沸騰させタービンを回し発電する過程を繰り返す。

 温泉地以外でバイナリー発電をする場合、工場の廃熱やゴミ焼却場の焼却処理で発生した熱を使う。

 七味温泉ホテルの橋本良彦社長によると、設置費用は3000万円で最大出力は20キロワット。発電した電力は中部電力に売り、最大で年725万円の収入になる。今後発電量を増やし、5~6年で投資費用を回収する計画だ。

 七味温泉ホテルではこれまで温泉が熱すぎたため、お湯に水を加えて冷やす必要があった。バイナリー発電を通すことでお湯の温度が10度ほど下がり、そのまま水で薄めずに源泉かけ流しに使えるようになった。

 バイナリー発電は地熱発電に比べ周辺環境への影響が少ないことが特徴だ。地熱発電は地中深く掘って取り出した蒸気を使ってタービンを回し、発電する。深く掘ることで温泉の枯渇や泉質の変化などを懸念し、旅館経営者などが反対する例がある。だが、バイナリー発電はすでにわき出した温泉の湯を使う。

 環境省によると、2012年度の県内の温泉地数は217で北海道の254に次ぐ。県は今回のバイナリー発電を「1村1自然エネルギープロジェクト」に認定し、154万円を助成した。橋本社長は「同業者で発電施設を見学に来る人も多い。県内で普及するきっかけになれば」と話している。

(逸見純也)

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