2018年7月19日(木)

目に余る臨床研究の不祥事

2014/4/10付
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 医薬品の臨床研究でまた不祥事が明るみに出た。医師と製薬会社のもたれ合いはかねて指摘され、「またか」という印象だ。産学間の不明朗な寄付金や便宜供与を一刻も早く排すべきだ。大学病院などは企業に寄りかからず研究ができる体制を整える必要がある。

 東京大学などの医師が進める白血病治療薬の研究に製薬会社のノバルティスファーマの社員が関与していた。薬の効果や副作用を調べる臨床研究は中立・公正が求められる。不明朗な形の社員の関与は研究の意義を損ね、医師や薬への信頼を傷つける。あってはならないことだ。

 社員は情報収集のなかで副作用に関する情報を得ていたが、厚生労働省に報告しなかった。研究に協力した患者を裏切る行為といえ、薬事法の報告義務違反にあたる疑いもある。

 同社は昨年、高血圧症治療薬の臨床研究でも社員がデータ解析に関わったことなどが問題となり、反省の意を示し社内改革に取り組んできた。そのさなかの新たな不祥事だ。報道機関の取材が始まると関係資料を処分するなど隠蔽を試みたのも悪質といえる。

 臨床研究では承認後の新薬を対象に薬の効能や副作用などを比べる。ノバルティスは組織ぐるみで研究計画の作成や患者アンケートの回収などに協力した。背景には特許切れが近い自社の旧製品から新製品への切り替えを促す狙いがあったとみられる。

 販売拡大を望むあまり一線を越える。ノバルティスだけではないだろう。製薬会社は営業と研究協力を明確に区別する必要がある。

 製薬業界は昨年から医師への寄付金の公表を始め、今回のケースでも金額を開示していたが、ルール違反を防げなかった。実効性のあるチェック体制が必要だ。

 企業の便宜供与に依存する医師の側の体質にも問題がある。

 厚労省は臨床研究への規制強化を検討しているが、健全な臨床研究を増やすため何をどこまで規制するかは幅広い議論が要る。

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